関西まちづくり賞
近江八景と東海道でつながる大津市と草津市の広域景観連携の取り組みを評価いただき、びわこ大津草津景観推進協議会、公益社団法人滋賀県建築士会(同大津地区委員会・湖南地区委員会)との三者連名にて、公益社団法人日本都市計画学会関西支部が主催する第22回「関西まちづくり賞」を受賞いたしました。
参考:公益社団法人日本都市計画学会 関西支部HP
参考:関西まちづくり賞 授賞実績一覧(公益社団法人 日本都市計画学会関西支部HP)
参考:谷ゆうじHP 近江八景と東海道でつながる 大津市と草津市の広域景観連携
下記、2019年度 第22回「関西まちづくり賞」応募用紙から、要約・転載
成果又は実績の名称「近江八景と東海道でつながる大津市と草津市の広域景観連携」
1 取り組みの地域と趣旨
〇「近江八景」と「東海道」でつながりのある大津市と草津市において、両市が連携し、市民及び関係者との協働のもと、対岸景観の活用、東海道の連続的・一体的な景観形成、幹線道路等における統一的な屋外広告物規制等の取り組みを進めることにより、良好な広域景観の保全・形成を目指すもの。
2 取り組みの背景
〇大津市では、平成15年10月の古都保存法に基づく古都指定をはじめとして、平成16年4月には「古都大津の風格ある景観をつくる基本条例」の施行及び「古都大津の風格ある景観をつくる基本計画」 の策定、平成18年2月には大津市景観計画の策定を実施し、古都にふさわしい景観の保全・形成を進めてきた。
〇そうした中、琵琶湖岸周辺に高層マンションの建設が相次いだことが問題となり、平成20年10月に、市街地における適切な高度利用のあり方と古都にふさわしい姿について検討するため、「市街地の高度利用のあり方検討委員会」を設置した。委員会における検討の結果、時代を超えて受け継がれてきた 「近江八景」に代表される眺望景観を保全・形成することが重要であるとの結論となり、平成22年3月に、同委員会から大津市に対し、「保全と創造で時を結ぶ『近江新八景』ルール」が提言された。
○一方、草津市は、平成22年4月にスタートした第5次草津市総合計画において「心地よさが感じら れるまちへ」の施策となる「うるおい・景観」の事業を進める中で、景観法に基づく景観行政団体と して草津らしい景観づくりを目指すための「草津市景観計画」の策定に取り組み、平成24年に同計画を施行した。策定に際し景観審議会等の意見を聴くなかで、「琵琶湖や旧街道などの広域景観については、隣接する他市と連携しながら、つながりや広がりのある景観形成に努める」旨の提言があり、 近江八景のうち「矢橋帰帆(やばせのきはん)」を有し、東海道の宿場町である草津市においても、琵琶湖を挟んで向かい合い、東海道でつながる両市の広域景観の取り組みの必要性が認識されるようになった。
〇また、滋賀県においては、平成20年3月に「ふるさと滋賀の風景を守り育てる条例」を改正され、同条例の規定に基づき、滋賀県内の景観行政団体が連携し県土の一体的な景観形成を図ることを目的として、平成21年2月に「滋賀県景観行政団体協議会」が設立された。その設立総会において、各景観行政団体が連携して取り組む必要がある事項として、「一体的な湖辺の景観形成」「歴史的な街道の景観形成」「広域的事業者との景観形成に関する連携」の 3項目について合意形成された。
〇その後の同協議会における取り組みにより、平成27年1月には「一体的な湖辺の景観形成」のための方針について合意形成されたが、適用区域が「用途地域を除く」とされており、湖辺の大半に市街化区域として用途地域を設定している大津市においては、実効性の低いものとなっている。また、平成27年度には「歴史的な街道の景観形成」のための滋賀県事業としての街道景観形成方針が策定されたが、具体的な施策の実施については、各景観行政団体に委ねられている状況である。
〇こうしたことから、実効的な広域景観形成にあたっては、隣接する景観行政団体同士が連携することが不可欠な状況となっている。
3 取り組みの体制
【びわこ大津草津景観推進協議会】
〇大津市と草津市が広域的な景観の保全及び形成を図り、景観を生かした魅力あるまちづくりを推進するため、共同して景観基本計画を策定することなどを目的に平成25年度に両市職員から成る任意 協議会として設立。平成27年12月には両市議会の議決を経て、地方自治法第252条の2の2に基づく協議会へと移行。
【びわこ東海道景観協議会】
〇両市共同の景観基本計画の検討にあたり、市民、事業者、行政の三者協働のもと、様々な関係者が課題について協議・調整し、問題解決を図ることを目的として、令和元年5月に景観法第15条第1項に基づく景観協議会として設立。
【公益社団法人滋賀県建築士会(同大津地区委員会・湖南地区委員会)】
〇広域景観連携に向けた両市民の機運を一体的に高められるよう、同会大津地区委員会と草津市を活 動エリアとする湖南地区委員会の協働体制構築。平成23年度より、大津市及び草津市に連携を呼びかけ、両市民への啓発活動を実施。
4 取り組みの経過及び成果
〈取り組みの経緯〉
①びわこ大津草津景観推進協議会(大津市・草津市の連携)
平成22年の「大津草津景観連絡会議」の設置以来、連携施策を進めており、平成24年には両市長で「対岸景観・東海道・屋外広告物」を主な連携項目とする協議会の設置に向けて取り組み、翌25年には「びわこ大津草津景観宣言」に調印。同宣言で掲げる「両市民が互いに協力し、価値の高い景観の保全と新たな創造に取り組み、一層愛着と魅力あるものとして未来につなげていく」目標を実現するため、両市行政職員で構成する「びわこ大津草津景観推進協議会」を設立。以後、東海道における両市共同デザインの看板設置や対岸眺望ポイントの選定など、連携項目についての具体的な施策検討を進めるとともに、従前の連絡調整協議会から地方自治法に基づく計画策定協議会への移行に向けて合意形成を図る。
平成28年に法定化が実現し、翌29年度には東海道統一案内看板専門部会を設置するなど、行政・市民・事業者での協働による活動を進める。また、より協議会が主体的に活動できるよう会計を設け、滋賀県建築士会の協力や両市議会のバックアップのもと、先進的な広域景観施策と、両市共同の景観基本計画の策定に取り組んでいる。
②公益社団法人滋賀県建築士会(同大津地区委員会・湖南地区委員会)
地域まちづくりへの貢献活動に取り組むとともに、景観の重要な要素である建築物のエキスパートとして、長きにわたり両市での景観施策に関わる。平成24年に、市民啓発事業「近江八景でつながる びわ湖の風景『急がばまわれ瀬田の唐橋』」を企画、両市協力のもと実施して以来、景観づくりチャレ ンジ隊など両市民への広域景観啓発事業を両市と協働で実施。東海道統一案内看板設置の取り組みにおいては、モデル看板や啓発看板の作成・寄贈、ワークショップでの工作体験を通じた啓発など、取り組みの推進にそれまで以上に大きな役割を果たす。
また、東海道統一案内看板専門部会や景観協議会の委員として参画し、両市の景観形成や地域まちづくりに継続的に関わっている。
③谷 祐治(大津市議会議員)
湖国の特徴である広がりとつながりのある風景を守り育てるため、大津市議会において近江八景を基 軸とした草津市との連携を提言。平成22年、「大津草津景観連絡会議」の設置に繋がることとなった。 以降も選挙公約では両市の連携推進を掲出し、「びわこ大津草津景観推進協議会」の設立、また、東海道統一案内看板の創設につながる指摘・提言を効果的に重ねてきた。両市が共有する景観基本計画の策定を視野に入れ、複数の景観行政団体が単一の景観協議会を構成することが可能となるよう、国土交通省に対して意見を申述。その後、両市議会が景観法運用指針の見直しを要望するにあたっては、自ら設立を提案した「大津市議会・草津市議会連携推進会議」の座長として、その実現に向けて中心的な役割を果たす。平成30年4月、景観法運用指針が改正されたことを受け、令和元年5月、「びわこ東海道景観協議会」が設立される。
これまでの間、平成27年には第10回マニフェスト大賞(同実行委員会主催、早稲田大学マニフェス ト研究所・毎日新聞社共催)において優秀マニフェスト賞、また、平成28年には第9回まちづくり賞 (公益社団法人日本建築士会連合会主催)を受賞。広域景観連携に向けた市民の機運を一体的に高め られるよう、所属する公益社団法人滋賀県建築士会(同大津地区委員会・湖南地区委員会)大津地区委員会(当時、大津支部)と草津市を活動エリアとする湖南地区委員会による協同体制の構築にも尽力する。そして、「びわこ大津草津景観推進協議会・東海道統一案内看板専門部会」ならびに「びわこ東海道景観協議会」には、大津市から景観整備機構の指定を受ける公益社団法人日本建築家協会・滋賀地域会長として参画し、協議会の活動にさらなる貢献を果たす。
〈取り組みの成果〉
地域の景観形成・まちづくりに取り組む3者が、それぞれの立場で得意とする領域を活かし、協働して啓発事業や施策を進めてきた。その取り組みが基盤となって、両市共同の景観基本計画の策定に際しては、行政だけでなく市民や事業者の参画のもと景観協議会にて検討していくこととなったが、これは平成30年4月の景観法運用指針改正後、複数の景観行政団体が共同で一つの景観協議会を設置した初の事例であり、3者による連携した取り組みが相乗効果となり実現した成果である。