高さ規制のあり方について( H19. 12)

質 問

 滋賀県内における新築分譲マンションの市場動向を調査したところ、昨年の契約率は70%を割り込んでおり、大津市においても需要不足傾向にあると考えられる。しかしながら、京都市で高さ規制などを強化されたことも影響してか、大津市内でマンション事業を展開するデベロッパーが多様化してきた。来年以降に完成する分譲マンションについて調査したところ、31mを超える11階以上の計画が大半を占める結果となり、琵琶湖岸の地域では、構造計算で大臣認定が必要となる60mは超えないものの、45mを優に超える計画が急増している。そんな中、先の議会で、「商業系用途地域の建築物の高度利用のあり方について、一定の検討を行う必要性があると考え、必要な調査、研究を始めていく」と決断された点、高く評価している。琵琶湖の風景、古都の風情など、本来、守られるべき市民共有の財産が失われつつある現状を鑑みると、一日も早い、市街化区域全域を対象にした高さ規制の導入が待ち望まれる。 



 先日、大津市と同じ湖に面した県庁所在地、島根県松江市を視察した。宍道湖は周囲を松江市、出雲市、斐川町の2市1町に囲まれ、全国7番目の大きさを有している。

 良好な眺望景観を持った展望地が数多く定められ、私が夕日を見た地点には、周辺案内図が設置され、足もとには季節ごとの撮影スポットを示すプレートが埋設されていた。また、宍道湖を挟んだ出雲市側に、国内最大級の風力発電所の建設計画が浮上した際には、山並みの稜線から多数の風車が不規則に突出することを理由に、多くの市民が計画の変更を望み、最終的には県の景観審議会が計画変更を求める答申書を知事に提出するに至ったと伺った。一人でも多くの市民が当事者意識を持ち、まちづくりにおいて優先すべき事項を確認し合う、こういった作業の継続が風土を継承していくことに繋がり、良好な景観、風景をつくり出していくという思いを新たにし、次の2点について質問。

 1点目は、高さ規制導入を目指す上での手法について。高度利用のあり方を検討するに当たっては、既存建築物の高さを調査した上で、想定する高さで不適格となる建物がどの程度生じるのか、また、関係する法令基準によって、建てられるフルボリュームがどの程度なのか、調査されると推察する。その地域にふさわしい高さを決定する基準はさまざまで、城が現存する場合、その一つとなることが多い。

 松江市においても、今から10年前、山陰で最大規模の建物が計画された際、行政は、松江城より低くすることを事業者に申し入れ、市民に理解を求めた。大津市に現存する城はありませんが、広域的な琵琶湖の風景、古都の風情などを市民にわかりやすく、自らの課題として議論に参画できるきっかけとなる基準を検討することも大切と考えるが、見解を問う。市民の多くが、市街化区域全域を対象とした早期の高さ規制導入を切に願い、その期待は高まるばかりである。古の都として、そして湖の都として、大津市の決断と実行の姿勢を全国に示すことで、懸案となっている無秩序な高層マンション建設は一定、抑制され、「結の湖都・大津」は実現に近づくものと考え、今後の見通し等を示されたい。

 2点目は、眺望点の整備について。先日、景観計画に定められた重要眺望点を訪ねたが、それを示す指標はなかった。特に夕照の道に面する琵琶湖漕艇場付近の眺望点は、朝日レガッタなどで多くの方がこの地を訪れる。比叡山に代表される保全すべき山並みの説明などを記したものがあれば、景観、風景に対する市民の理解もより深まると考えるが、将来の周辺整備計画とあわせ、見解を問う。 

答弁:都市計画部長

 高さ規制導入を目指す手法については、議員御提案の、「市民にわかりやすく、自らの課題として議論に参画できるきっかけとなる基準」を検討することは、本市としても必要と考えているが、本市は既に昭和48年から市街化区域の8割を占める住居系用途地域の全てにおいて高度地区を定め、さらに昨年10月からは大津市景観計画を施行し、大半の商業系用途地域においても、八つの重要眺望点からの高さを含む景観誘導を行っているところである。今後、商業系用途地域おける適切な高度利用のあり方について検討する中で、基準となる高さ等を探ることをはじめ、さまざまな調査を行い、大津の特色ある歴史や風土を生かした景観誘導策を早期に実現してまいりたいと考えている。

 次に、眺望点の整備については、標識や説明表示板などで眺望点を明らかにしていくことは、市民や来訪者に対して、大津らしい美しい景観を望む場所や、その姿をアピールすることに繋がり、また、本市が既に実施している景観シミュレーションの精度を高め、事業者の方々に指導し、理解を求める確かなよりどころになり、景観保全の推進に大きな力になると考えている。今後、技術的に設置可能かどうかという検討や、その効果を検証しつつ、眺望点の整備に取り組んでまいりたいと考えている。

 また、瀬田川漕艇場付近については、議員お述べのとおり、朝日レガッタをはじめ、湖国はもとより、関西、日本のボートやカヌーといった水のスポーツのメッカであり、市民をはじめ多くの方々が来られ、その風景や景観を楽しんでおられる。こういったことから、今後、この重要眺望点である瀬田湖岸緑地の整備につきましては、さまざまな角度から検討してまいりたいと考えている。

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