防災拠点施設でありながら必要な耐震化が今もって図られていない本庁舎の整備に向けた取り組みについて( R2. 9)
質問
今期通常会議に提出された補正予算案において、中消防署更新整備に係る移転場所を対象にした用地測量委託費が計上されました。候補とされてきた国有地である別所合同宿舎用地への移転や市役所別館現地建替えでなく、滋賀県が所有するびわこ競艇場駐車場敷地の一部を取得すると説明を受けました。これまで行ってきた質疑一般質問において、候補地に含まれない当該用地の評価が消防局内において最も高いことを公文書の開示請求結果を踏まえて明らかにしてきましたが、平成29年度に公表された4カ所6候補地からこの度の絞り込みに至るまでの経過をあらためて振り返り、市議会が担うべきチェック機能の重要性を再認識した次第です。
「必要な耐震化が図られていない庁舎の整備を実現するため、中消防署用地の早期選定を求める決議」が全議員賛成のもとで可決されてから3年を迎えようとしています。最終的な絞り込みに至ったことを評価するものですが、この決議はあくまで、必要な耐震化が図られていない庁舎の整備を実現するため、大津市長に対し、早期に中消防署用地を選定することを求めたものです。大津市は平成16年度に庁内組織として、技術部会・若手部会・防災部会の三部会からなる庁舎整備検討委員会を組織して以降、平成17年度には、中堅職員グループによって構成される庁舎整備研究会を立ち上げ、委託により庁舎建設実行可能性調査が行われました。これらの成果を踏まえ、平成18年度には学識経験者、市民団体の代表者、公募市民によって庁舎のあり方検討委員会が設置されると共に、大津市議会には庁舎整備特別委員会が設置され、庁舎整備に関する諸問題の調査研究が行われてきました。私自身、庁舎のあり方検討委員会で委員を務めたこともあり、大津市議会議員として負託を受けて以降、耐震性の確保に向けて指摘提言を重ねてきましたが、今もって整備の方向性を市民にお示しできていない現状に対し、強い危機感を抱いています。
この機会にあらためて申し上げたいのは、本館、別館ともに各階で構造耐震指標が目標値であるIs値0.9を大幅に下回っていることが判明してから16年近くが経過しているということです。これまでの間、生存空間の確保を目的として、靭性を向上させるための応急的な補強は実施されてきたものの、防災拠点施設でありながら、機能空間を確保するための耐震化は今もって図られていません。本庁舎の整備がこれ以上、スケジュールも明らかにされないまま、遅延することはあってはならないと考え、以下3点質問を行います。
1点目、免震レトロフィット工法による本館の改修について。大津市は庁舎整備を進めるにあたり、本館を免震レトロフィット工法により耐震改修する案と解体する案を比較の対象としています。いずれの案も別館については解体を前提としており、それぞれ、新棟を別館跡地もしくは取得した隣接旧国有地を活用して建築する計4案をもって、整備パターンとしています。これまでの間、中消防署の更新整備を行うにあたり、別館現地建替えが候補に含まれていたことから、整備パターンを絞り込むにあたって、大きな不確定要素となっていました。移転用地を確保できなければ、庁舎敷地内における土砂災害警戒区域外において改築を計画するしかなく、「必要な耐震化が図られていない庁舎の整備を実現するため、中消防署用地の早期選定を求める決議」においても、中消防署用地の選定ができていないままで庁舎整備基本方針を策定することは、大規模災害発生時における対応力や庁舎整備基本計画の実現性に影響を及ぼす事態となりかねないとの指摘がなされています。
しかしながら、中消防署をびわこ競艇場駐車場敷地に移転させる方針が示されたことに伴い、当該決議で示された懸念は一定解消されたものと判断するものです。大津市はこれまでの間、本館整備検討業務の結果を踏まえ、行政手続の簡素化やICTの進展による庁舎規模の検討、また、公共施設マネジメントの観点等、あらゆる市有施設の活用の可能性など、総合的な検討を行い、整備パターンや庁舎整備規模を決定する必要があるとの見解を示してきましたが、この度の方針決定を契機として、必要な耐震化が図られていない庁舎の整備を実現するため、取り組みを加速させるべきと考えます。
大津市はこれまでの間、基礎地盤の性質を把握するための調査・解析や基礎杭の健全性を確認するための試掘調査などの免震改修検討業務と本館各階における建築、電気、機械各設備の劣化度を調査するための業務を実施しないと免震レトロフィット工法によって改修するための基本計画や新棟を建築するための基本計画に進めないとの説明を市議会に対して行ってきましたが、質疑一般質問における答弁においては、同工法にて改修することとなれば、必要となる調査検討を進めていくとの方針を示しています。
令和2年2月通常会議において、大津市は本館の歴史的、文化財的な価値をどのように評価した上で、必要となる調査検討に取り組んでいくつもりなのか、見解を求めたところ、日本建築学会が優れた建築物として保全を要望されていることは認識しているが、平成30年度に行った本館整備検討業務の調査結果から、免震レトロフィット改修を行うには多額の経費を要し、本館を取り壊して新棟を整備するのと比べて金額面で大きく有利になるものではないことが判明しているため、市民の理解を得られるよう慎重に検討しなければならないとの考えが示されました。限られた財源を効果的に活用し、耐震性能を有する庁舎を整備することはもちろん重要と認識するものですが、歴史的文化的な価値を有すると評価されている本館を保存・活用すべきか、それとも解体すべきかを検討するにあたっては、経済的な優位性のみで判断できるものではありません。
同通常会議において、免震レトロフィット工法によって本庁舎を改修される京都市の取り組みを参考事例として紹介いたしました。同市は市庁舎整備基本計画の策定に先立ち、本庁舎の歴史的、文化的、建築的位置付け等について評価するため、本庁舎に関する学術調査を実施されており、意匠的特徴や保存の意義を市民に明確にされたうえ、保存・活用する方針を明らかにされています。大津市においても市民理解を得る重要性については認識をされており、アンケート調査を実施する可能性についても議会答弁で言及されていますが、まずは、主体的に近代建築としての価値をあらためて評価したうえで、市民に理解を求めることが重要と考えます。あらためて申し上げますが、大津市が設置する多くの施設で施工されてきたブレースや耐力壁を設置しての耐震補強工事では、必要とする構造耐震指標を確保し、庁舎として機能させることは極めて困難です。まずはこの事実に対して市民に理解を求め、多額の費用を要する免震レトロフィット工法による改修を行ってでも、歴史的文化的価値の高い建築物として後世に継承すべきか否か、大津市として何を優先するのかを明らかにしたうえで方針を決定する必要があります。
大津市は庁舎整備基本計画を策定するにあたり、免震レトロフィット工法による改修を実施するか否かの判断をどの様な取り組みのもとで行っていくつもりなのか。専門家や市民意見を意思決定に反映させるための方針とあわせて見解を求めます。
また、令和元年6月通常会議において、公共施設マネジメントの観点から、狭あい化と老朽化が進む大津市立図書館本館の移転先として検討に含めることを提言いたしましたが、免震レトロフィット工法による改修により、その価値をより多くの市民に実感いただくことを優先するのであれば、世代を超えて多くの市民が利用する用途での複合的な利活用を検討に含めてはとあらためて提言するものです。中消防署移転用地の絞り込みが実現し、本庁舎の機能として必要な面積をあらためて検討されることになると認識するものですが、佐藤市長は越市長のもと行われてきたこれまでの検討をどの様に評価され、また、見直されたうえ、防災拠点施設でありながら必要な耐震化が今もって図られていない本庁舎の整備に向けた取り組みを加速していかれる考えなのか。庁舎整備基本計画の策定に向けたスケジュール感とあわせて見解を求めます。
2点目、中消消防署移転用地の絞り込みに伴い、市役所隣接旧国有地が受ける土地利用上の制約について。大津市がびわこ競艇場駐車場用地の一部を取得することによって、駐車台数約130台分が減ずることになります。このことを踏まえ、市有地である市役所隣接旧国有地約3,900㎡、駐車台数にして約80台分をびわこ競艇場の臨時駐車場用地として年に10日程度、滋賀県に貸し出されると説明を受けました。大津市からの要望に伴う対応と評価をしておりますが、当該駐車場として利用される期間は、市役所隣接旧国有地を庁舎整備用地として活用することができません。
びわこ競艇場臨時駐車場用地として、市役所隣接旧国有地が受ける土地利用上の制約はあくまで暫定的なものであり、庁舎整備計画の推進に影響を及ぼすものでないと理解してよいのか。滋賀県との協議経過を踏まえて答弁を求めます。
答弁:総務部長
1点目の免震レトロフィット工法による改修を実施するか否かの判断をどの様な取り組みのもとで行っていくつもりなのかについてでありますが、平成30年度に行った「本館整備検討業務」において、平成27年度の「隣接国有地を活用した庁舎整備検討支援業務」で検討し、選定した整備案を基本とし、4つの庁舎整備パターンを整理した検討結果から、免震工事そのものについても、また老朽化している各種設備を今後継続して使用するための改修についても多額の経費を要し、本館を取り壊して新棟を整備する現地建替えと比べて、必ずしも経済的な優位性があるとは言えないことが判明しております。
また、これまで説明してきた、さらなる詳細な調査、つまり地盤調査、基礎試掘など地下部分の健全性に係る調査は、本館を免震レトロフィット工法によって整備する実現性の可否を判断するものではなく、実際に施工するにあたり同工法の実効性を高めるために必要な調査であると認識しているところであります。従って、免震レトロフィット工法により改修しないのであれば、調査を行う必要はないと考えております。
一方で、議員お述べの、日本建築学会が庁舎本館の保全を要望されていることについてですが、巨額を投じて保存することについては、専門家の意見はもとより、市民の判断が重要な要素となってくるものと考えます。その上で、整備手法の検討においては、新型コロナウイルス感染症による本市財政への影響を考慮するとともに、感染防止のために新たに庁舎に求められる機能や構造等を整理したうえ、総合的で慎重な判断をすることが求められるものと認識しています。
2点目の、本庁舎の整備に向けた取り組みを加速していく考えについてでありますが、庁舎整備にあたって、その前提となる中消防署の移転候補地選定及び用地取得を最優先としつつ、これまでは4つの整備パターンにより検討してまいりましたが、感染防止対策や「新しい生活様式」の実践も考慮しながら、庁舎規模や整備手法などの検討を進める必要があることから、これまでの検討のベースとなった整備パターンのみにとらわれることなく検討してまいります。
また、庁舎整備基本計画の策定に向けたスケジュールについてですが、まず中消防署の移転新築の進捗状況を見極めた上で、次年度からの中期財政フレームとの整合を図りながら、まずは庁舎整備の基本構想を策定していく必要があると考えております。
次に、中消防署移転用地の絞り込みに伴い、市役所隣接旧国有地が受ける土地利用の制約についてでありますが、滋賀県に対し、平成30年2月に初めて琵琶湖競艇場駐車場敷地の一部を中消防署移転用地として協力のお願いしたところ、駐車台数の減少による競艇事業への影響を懸念され、代替地の提供がなければ用地協力は困難とされていました。
しかし、今年度になって改めて滋賀県と協議したところ、駐車場の機能代替として市役所隣接旧国有地の一部借用の申し出があったものですが、本市としては年間10日ほどの利用の大半が閉庁日であり、来庁者への支障がほとんどないと考えられることから申し出に応じております。このように県市相互の信頼関係のもとで事業用地として絞り込みに至ったものでありますが、市役所隣接旧国有地については、本市において活用が図られるまでの暫定的な貸付けとなることは十分にご理解をいただいているものであります。
再質問
再質問いたします。2点行います。まず1点目です。初問において、大津市は庁舎整備基本計画を策定するに当たり、免震レトロフィット工法による改修を実施するか否かの判断をどのような取組の下で行っていくつもりなのか、専門家や市民意見を意思決定に反映させるための方針と併せて見解を求めますということで、答弁をいただいたところです。総合的に、慎重に取り組んでいく必要があるといったような答弁もございました。多額の予算を要する事業でもありますし、ましてや、再三にわたって申し上げていますが、防災拠点施設となる施設でもありますので、総合的に慎重に判断いただかなければならないということについては、私なりに理解をしているところです。
しかしながら、初問でも申し上げてまいりましたが、大津市として課題認識されてから相当な年数が経過をしております。この間、様々な検討や検証、委託等が行われてきましたが、市民の皆さんに対して整備の方針をお示しするまでには至っておりません。初問でも提言させていただきましたが、免震レトロフィットを実施するか否か、大津市として意思決定するに当たって、現時点においては学会から要望いただいていると、そのことについて承知をしているというのが大津市の姿勢でありました。繰り返しになりますが、私はこの建物を設置、管理する大津市として、この建物の価値をしっかりと自己評価されるための取組が必要不可欠であると考えます。この点、改めて見解を求めます。
2点目です。私は、庁舎整備基本計画の策定に向けたスケジュール感と併せて、今後の取組方針を問わせていただきました。今、答弁において、庁舎整備基本構想、計画に先立ってまずは構想を策定する意思を今明確にしていただきました。その上で、今まで示されていた、先ほども議場で投映させていただきましたが、これまで示されてきた4パターンに限ることなく、改めて予断なく検討されていかれるといった方針も明らかにされました。
その上で、改めてお伺いをさせていただきます。初問でも申し上げましたが、しっかりと市民の皆さん方に対してスケジュール感をお示しいただくことは重要だと考えます。議員として負託をいただいている私自身にも任期はございますし、佐藤市長にも当然任期がございます。しっかりとスケジュール感を示された中でこの基本構想に取り組んでいく意思を示されることも併せて重要だと考えるわけですが、この点改めて見解を求めて再質問といたします。
答弁:総務部長
まず1点目、免震レトロフィット、近代的な価値について市としての自己評価をすべきではないかとのお尋ねでした。日本建築学会からは、いろんな観点で評価をいただいております。技術性や社会性、あるいは文化、審美性など、いろんな形で評価をいただいていると。このことに対して、例えば専門家の方の御意見を伺う、あるいはパネル展示をして、造詣の深い方もいらっしゃいますからそういった御意見を伺う、そういったやり方はいろいろとあると思いますが、現時点では未定であります。市としては、その意見を取りまとめて情報発信をするということは考えておりますが、仮にやるとしても、一方でやはり巨額の投資が必要であるということを併せて情報発信をしてまいりたい、そのように考えております。
それから、スケジュールでありますが、先ほど申しましたとおり、次期からの中期財政フレームにしっかりと検討していきたいと、そこで基本構想をしていきたいと述べさせていただいたところです。コロナの感染拡大の中で、市税をはじめとして経済状況が不透明な中で、今現在この時点でいつということはなかなか申し上げられないところでありますが、先ほどからおっしゃっていただいておりますように、我々も認識しておりますが、既に16年経過している中で、しっかりと全庁的に取り組んでいくと、そういう形で考えております。
再々質問
基本構想を策定される意思を明確にされたことについては評価をさせていただきます。 しかしながら、中期財政フレームに反映いただくことはもちろん重要なのですが、繰り返しになりますが、これまで時間だけが経過をしています。もちろん、これまで検討されてきたことは今後も生かされるでしょうし、検討に反映をされるのでしょうが、私はぜひとも市長に決意をお示しいただきたいと考えます。改めて、庁舎整備基本構想の策定に向けたスケジュール感と併せて、市長に答弁を求めます。
答弁:市長
まず、申し上げたいのは、谷議員御指摘いただいたように、やはり市民の皆さんの安心・安全、そして同時に職員の安心・安全のために、この庁舎をこのままでいたずらに放置しておくということは我々には許されないことであろうと思っております。その上で、先ほどの免震レトロフィット工法の御提案もありましたけれども、これについてもこれまでの調査の中で免震改修にさらに経費が上乗せされる可能性も指摘される、そういった課題もあります。そういったものを一つ一つ、今までの知見は知見として生かしながら、そして同時に今この新型コロナウイルスの感染の拡大に伴って、この庁舎についても、従前は耐震性能の不足であるとかバリアフリーが確保できていないとか設備の老朽化だとか、そういった問題を中心に論じていましたけれども、今指摘されているのは換気が不十分であったことによって集団感染が発生をした、また1階の窓口についても、どうしても待合スペースが密になってしまう、そして執務環境が密になってしまう。こういったことも加味しながら、ここから新たにこの本庁舎に求められる機能、規模、そしてこれから求められる構造、そういったものもここからまた議論していく必要があると思っています。
そういった中で、先ほど評価をいただきましたけれども、中消防署の移転用地の絞り込みについては、私自身2月のこの市議会の場において早急にそのことはお示しをしたいということを谷議員に答弁をさせていただきました。
そのことを、一つ前進したということを共有しながら、この本庁舎の整備についても問題を共有しながら、そして先ほど総務部長が答弁したとおり、この基本構想の策定についてしっかりと前に進めてまいりたいと思います。