防災対策について( H19. 12)
質 問 |
平成19年6月に滋賀県が実施した世論調査によると、平成16年に調査したときと比べ、すべての調査項目において防災意識の高まりが見てとれ、大津地域においては7割を超える方が、「琵琶湖西岸断層帯による地震で、あなたの住宅やあなたの住んでいる地域に重大な被害が生じると思う」と回答されている。そんな中、先月初め、中央防災会議の専門調査会から、近畿・中部圏で内陸沖地震が起こった場合に想定される死者数と建物被害が発表された。断層をより人口の多い地域に仮定し、強風や軟弱地盤も考慮したもので、花折断層帯の被害の想定結果は、滋賀県が実施していたものを大きく上回り、琵琶湖西岸断層帯の被害想定に匹敵するものとなった。
条件によって異なるが、滋賀県における最悪のケースは、死者約1,200人、建物全壊約3,700棟に上ると予測され、県内各自治体ともこれを受け、防災計画の見直しを迫られることになるだろう。市民、事業者、行政、それぞれが今、できることの最善を尽くすことで、1人でも多くの命を守らなければならないと考え、必要と考える4点について質問。
1点目は、木造住宅の耐震補強について。大津市には無料耐震診断制度があり、昨年度は210件の申し込みがあった。そのうち、耐震・バリアフリー改修事業の補助対象となる総合評点0.7未満であったものは全体の約75%、一応安全とされる総合評点1.0以上1.5未満と判定された住宅は約3%にすぎなかったが、耐震基準に達するだけの補強をされる住宅は残念ながら多くはない。
木造住宅の耐震診断を人間の体に例えるならば、健康診断、人間ドックがこれに当たります。せっかく受けていただいても、補強、すなわち治療していただかなければ意味がないわけです。人的な体制、制度の充実を図り、たとえ耐震基準に達していなくても、強い揺れでも直ちには倒れない耐震工事の推進を行うべきだと考えるが、所見を問う。
2点目は、家具の転倒予防について。京都市消防局では、市民に家具転倒防止対策の必要性を理解してもらい、自主防災組織全体に普及させていくことを目的として、概ね65歳以上の高齢者の方、また、お体が不自由で、災害時、自力による避難が困難な方を対象に、寝室家具への転倒防止板を無料で設置しておられる。また、視察で訪れた東京都杉並区では、転倒防止器具をエントランスホールの陳列棚に並べ、区民に啓発しておられた。
日本建築学会の調査によると、阪神・淡路大震災における震度7の地域では、住宅の全・半壊を間逃れたにも関わらず、全体の約6割の部屋で家具が転倒し、散乱したそうで、家具類の転倒は、直接的な危険だけでなく、出火防止、初期消火の妨げにもなりかねない。火災による二次災害の拡大防止のためにも、家具類の転倒防止は地震対策の中でも重要なことであり、大津市として今以上の啓発、また対策を講じる必要があると考えるが、見解を問う。
3点目は、防災教育について。先日、瀬田小学校と打出中学校の防災教育に参加してきた。滋賀地震防災市民ネットの方が講師を務められ、生徒は熱心に学習に取り組んでいた。特に瀬田小学校で実施されたフィールド学習は大変興味深く、消防署、支所、交番を子どもたちが訪問し、「地震が起きたとき、私たちはどのような行動をとればよいですか」などの質問を熱心にしていた。印象に残ったのは、当日、ボランティアにお越しくださった皆さんの顔ぶれ。大学関係者、滋賀県の建築技師、自主防災組織立ち上げを目指す地域の方々など様々で、皆さん一様に学習の成果を実感しておられた。起震車に乗り、大地震の揺れを実感すること、また避難訓練を実施することはもちろん大切だが、子どもたちなりに当事者意識を持って、自主的に何ができるのかを学ぶことも大切だと考える。 大津市内全域において、こういった防災学習が実施されることを期待するが、現在における防災学習に対する評価と、今後の課題に対する認識を問う。
最後に庁舎のあり方について。先日、市職員の勤務時間内における地震初動活動の実態を調査するため、鳥取県米子市を視察した。平成12年10月6日13時30分、鳥取県西部沖を震源とするマグニチュード7.3の地震が発生し、火災発生はなかったものの、液状化現象は多発、1,000棟以上の家屋が全・半壊し、多くの市民の方が避難所での生活を余儀なくされた。米子市役所は新耐震基準で建設されていたため、多少の混乱は生じたものの、初動活動に大きな影響はなかった。
しかしながら、大津市役所本館棟の耐震性能は、平成17年、18年度で耐震二次診断が実施された小中学校の校舎棟と比較しても著しく悪く、職員の無事が確保され、速やかに対策本部等が設置できるのか、心配でならない。私自身、委員の1人として参加させていただいた、庁舎のあり方検討委員会の報告書が市長に提出されてから、もうすぐ1年が経過しようとしている。最終章、今後の検討に願うことでは、「庁舎整備の検討については、市民の理解を得ながら慎重に進める必要がありますが、現庁舎の現状を考えると、さまざまな課題の中でも、特に耐震性能の不足が非常に心配であり、早急に何らかの抜本的な対策が必要であることは明らかであるので、その対応について、前向きに、具体的な検討を進めていく必要がある」と記され、いつ起こるかわからない地震に対する備えを促す内容となっている。
大津市は、この答申内容をどのように理解し、対応していこうとしているのか。文教施設の耐震補強工事を優先して推進することはもちろん大切だが、地震発生時の救助、救護に大きな影響を及ぼす事態だけは、何としても未然に防がなければならない。重要度係数1.5を採用する耐震補強ではなく、建物を倒壊させないことを目的とした補強を、どこまでの金額をかけてどの程度行うのか、検討を始めることが妥当だと考えるが、見解を問う。
答弁:都市計画部長(木造住宅の耐震補強について) |
強い地震の揺れに対しても、建築物が直ぐには倒れないようにするための耐震補強については、地震対策として有効であると考えている。大津市としても、議員お述べの建築物の耐震性の向上や補助制度に関して、今後、国、県とも十分に協議を行い、制度の拡充が図れるよう、要望してまいりたいと考えている。
答弁:総務部長(家具の転倒防止について、庁舎のあり方について) |
新潟県中越沖地震をはじめ、最近発生した地震では、家具類の転倒や落下物による負傷者が、負傷原因の約3割から5割を占めるという統計結果が出ている。こうしたことから、家具類の転倒や落下の防止は、地震発生時に人的被害を低減するとともに、地震火災を予防する上でも大変有効なものと考えている。このことを踏まえ、地域住民に対して家具類の転倒防止対策の普及を図るため、消防局と連携をし、出前講座や地域における防災研修会など、啓発活動を実施している。今後も自主防災組織や各種団体とも連携をしながら、家具類の転倒防止対策の啓発に努めるとともに、「広報おおつ」での特集やホームページの掲載など、あらゆるメディアを活用して、広く市民に周知をしてまいりたいと考えている。
庁舎整備については、今日まで、現庁舎が抱えるさまざまな問題を踏まえて検討を重ねてきた。とりわけ耐震性能の確保については、市庁舎が災害発生時には市民の生命と安全を確保するための災害対策の中枢機能を担うものであることから、大津市公共施設の耐震改修推進要領により、Is値0.9を満たすことが求められており、これを前提として総合的に検討を行ってきた。この結果、庁舎のあり方検討委員会からは、早急に何らかの抜本的な対策が必要であることは明らかであり、前向きに具体的な検討を進めていく必要があるものと報告をいただき、現在、その検討を進めているところである。
なお、当面の対策としては、昨年度には庁舎新館での防災センター機能を整備するための改修工事や、高機能消防指令システムの設置を行い、大規模災害時における防災拠点としての機能強化を図るとともに、今年度は本館エレベーターの改修工事等を実施したところである。今後も市民の皆様をはじめ、議会の皆様の御理解をいただきながら、費用対効果を踏まえながら、必要な改修を進めてまいりたいと考えている。
答弁:教育長(防災教育について) |
瀬田小学校が実施しているように、子どもたちが自然災害を身近に起こるかもしれないものと危機意識を持ち、命を守るために何をなすべきか、そういうふうに考える学習は、防災意識を高めるために意味のあるものと考えている。また、他の学校でも避難訓練だけの防災学習ではなく、少しずつではあるが、危機意識を持たせようとする取り組みが広がっている。例えば志賀中学校では、県防災危機管理局などの協力を得て、実習を通して、まちのどこが地震で危険かを見つけ、地域防災に生かす学習を試みた事例もある。今後の課題については、議員お述べのような当事者意識を持って、自主的に何ができるかを考える防災学習を進めるためには、子どもたちの発達段階に応じた指導計画を作成するとともに、関係機関との連携を進め、地域全体で防災意識を高めていくことが必要であると考えている。