近代化産業遺産を活かしたまちづくりについて( H23. 5)

質 問

 びわ湖大津館は、昭和9年に開業した旧琵琶湖ホテル本館を改修した施設であり、平成19年には、外貨獲得と近代日本の国際化に貢献した観光産業創世記の歩みを物語る近代化産業遺産群を構成する遺産に認定された。当時、大津市は長い歴史と琵琶湖畔に位置する地形から、遊覧都市を目指すべき都市像として掲げており、官民共同出資により建設された旧琵琶湖ホテルはその実現に向け大きな役割を果たしてきた。現在、びわ湖大津館は、財団法人大津市公園緑地協会が指定管理者として管理を行っている。隣接するイングリッシュガーデンには、バラをはじめとするさまざまな草花が咲き誇り、ローズフェスタが開催されるなど、年間を通じてさまざまな自主事業が実施されている。しかしながら、昨年度における貸し会議室の稼働率は、半数以上の部屋において1割未満、最も低い部屋では2%未満であり、眺望の期待できる部屋の稼働率とは対照的な結果となっている。びわ湖大津館は、旧琵琶湖ホテルとして建設されて以降、現在に至るまで、さまざまな形で大津のまちづくりに寄与してきた。施設が立地する柳が崎湖畔公園は、日本の歴史公園100選に選定されるなど、大津市を代表する公園であり、平成23年度中には護岸整備が完了し、砂浜と一体になった利用が可能となる。次年度、びわ湖大津館は開設10年目を迎えることになるが、都市公園法における体験学習施設としての機能充実を図り、本来の設置目的に即した利活用を促進すべきである。年間を通じての稼働が見込めない貸し会議室については、協力協定を締結する大学や体験学習に取り組む各種団体との協働の場と位置づけ、船が寄港できる桟橋が目の前に設置されていることからも、びわ湖大津館は琵琶湖をテーマにした環境学習旅行にふさわしい施設であると考える。大津市は、びわ湖大津館の現状をどのように評価し、今後どういった形でまちづくりに生かすべきと考えているのか。

 2点目、琵琶湖疏水について質問。明治23年に竣工した琵琶湖疏水の関連遺産は、平成19年に京都における産業の近代化の歩みを物語る琵琶湖疏水などの近代化産業遺産群を構成する遺産として認定されている。大津市に所在する遺産のうち、三井寺町に位置する第1疏水第1トンネル東口の扁額を記したのは初代内閣総理大臣伊藤博文であり、さまざまに変化する光景はすばらしいことを意味する気象萬千という文字が書かれている。また、藤尾奥町に位置する西口の扁額を記したのは、明治の元勲山縣有朋であり、当時わが国最長であったこのトンネル工事が、京都のみならず日本の近代化に大きな役割を果たしたことを後世に伝えている。工事の促進を図るために掘られた2本の立て坑を含め、同第1トンネルの東口及び西口は国指定の史跡にも指定されているが、大津市においては琵琶湖疏水の歴史的価値を市民や来訪者が知る機会が少ないと考える。大津市観光交流基本計画アクションプランにおいては、産業観光の推進は施策項目に掲げられ、琵琶湖疏水は大津を知る上で貴重な観光資源と位置づけられている。産業遺産をテーマとした観光ルートの策定に取り組むとされているが、今後どのような形でこれに取り組むのか。

 3点目、旧逢坂山隧道について。明治13年に竣工した旧逢坂山隧道の東口は、平成21年に山岳、海峡を克服し全国鉄道網形成に貢献したトンネル建設などの歩みを物語る近代化産業遺産群を構成する遺産として認定をされた。このトンネルは、日本人の技術者、技能者が主体となって設計施工を行ったわが国最初の山岳トンネルであり、竣工を記念して時の太政大臣三条実美が記した扁額を入り口に見ることができる。日本の技術史上大きな意義を持つトンネルとして、昭和35年に鉄道記念物にも指定され、JR西日本が案内看板を設置されていますが、敷地の入り口には鎖がかけられ、来訪者が自由に近づける状態になっていないことを、平成21年6月定例会で指摘した。トンネル入り口付近に設置された廃棄物減量推進課が管理する倉庫は解体される予定と認識しているが、今後どういった方針で地域活性化に役立つ遺産として周辺整備を行っていくのか。

答弁:都市計画部長

 びわ湖大津館については、会議室の稼働率が低迷し、来館者も減少していることから、この恵まれた資源をさらに生かす、新たな視点での運営の検討が必要と考えている。びわ湖大津館は来年、開館10周年を迎えるが、本年度中には柳が崎湖畔公園の旧水泳場跡の砂浜への回遊園路も完成する。これを機に指定管理者を含め、民間企業や大学、市民団体の皆様と検討組織を設け、水と親しむ体験イベントの開催や環境学習の場の提供等、新たな集客につながる利活用の可能性を模索していきたいと考えている。 

答弁:産業観光部長

 琵琶湖疏水については、昨年度、疏水竣工120周年を記念して、「琵琶湖疏水の歴史散策」と題する冊子が京都の民間団体により作成され、(社)京都市観光協会や京阪電気鉄道(株)等が連携し、琵琶湖疏水の本市三保ヶ崎取水点から京都市鴨川間を活用した散策イベントが開催された。本市としても、大津の魅力の一つである琵琶湖を活用した事業であり、アクションプランのテーマである「大津おもてなしとびわ湖と水の物語」を推進する意義ある取り組みであることから、今後は、この事業が継続される場合には連携策が必要であると考えており、京都市や関係団体等と連携した他に琵琶湖疏水を活用した事業についても検討していきたいと考えている。 

 また、琵琶湖疏水と周辺にある旧大津公会堂や中心市街地の町家など他の地域資源との連携を図るルートをはじめ、鉄道軌道としての旧逢坂山隧道と、明治22年、瀬田川に架橋され、東京と大阪間が1本のレールで初めて結ばれたとされる瀬田川鉄橋などの鉄道ファンには興味あるルートなど、複数の産業遺産等の広域連携や情報の一元的提供についても検討していきたいと考えている。

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