水文化が活かされる高さ規制について( H22. 2)
質 問 (水文化に対する理解について) |
平成20年9月に「市街地の高度利用のあり方検討委員会」を設置されて以降、専門的、技術的な協議が継続的に進められてきた。「琵琶湖でつながる大津の景観」を基本目標に掲げられ、湖都にふさわしい都市空間の創造に近江八景を重ね合わせ、高さの規制を検討されていると理解している。歌川広重などによって描かれた近江八景には、琵琶湖と一体になった歴史的風土が描かれており、大津の水文化を象徴するものであると考えるが、本市は水文化をどのように理解し、水辺景観の保全と創造に努めていかれるつもりなのか、見解を問う。
答弁:都市計画部長 |
水文化については、琵琶湖を中心にその美しい水辺景観とともに、人々の営みによって長い歴史の上につくり出されてきたものであると認識をしている。水文化を象徴する水辺景観は、大津を特徴づける景観であり、大津を代表する景観でもある。この大津らしい景観を守り育てるため、大津市景観計画に基づく取り組みを引き続き推進し、良好な景観形成に努めていくものである。
再問 |
大津らしい景観とのことであるが、もう少し詳しく答弁いただきたい。質問の中で近江八景という言葉を引用した。御承知のことと思うが、近江というのはもともと都に近い淡海、すなわち琵琶湖をあらわす言葉であり、私は大津らしい景観というのは、琵琶湖なくしては語れないと考え、改めて見解を伺う。
答弁:都市計画部長 |
大津らしい景観という質問、これは検討委員会の中でももちろん出てきた。その象徴は琵琶湖であるが、その背景にあるのは水文化であると理解をしている。必ずしも琵琶湖に限らず、例えば大津の場合は坂本や北部のほうでは、例えば川の水を洗濯に使ったり、食器、野菜を洗ったり、田や畑に使ったり、流れ出た川の水はまた藻が茂ったらその藻を畑に返したりという水循環の文化があり、中心市街地の中でも、例えば魚屋さんとかおふろ屋さんとか、地下水をたくさん使う産業が今も残されている。南のほうでは月輪池という名所図絵にも出てくるようなため池もあり、水を祭ったお祭りや社もある。
そういう水文化が大津の中にあり、その水文化を深く意識しているから、象徴としての琵琶湖の景観を大事にしていこうという結論になったと思われ、基本となる琵琶湖に限らず、大津が関わっている様々な水に関わる生活というものを大事にした景観形成、これを大事にしていきたいと私は考える。
質 問 (近江八景「矢橋の帰帆」に対する理解について) |
近江八景のうち矢橋の帰帆は、現在の草津市にあった矢橋港と石場港を結んだ矢橋の渡しを描いたものであり、連歌、「もののふの 矢橋の船は速けれど 急がば回れ瀬田の長橋」は、ことわざ、急がば回れの語源として知られている。
わたしは、さらなる高さ規制を実現する上において近江八景を大切にするのであれば、「八景のうち矢橋だけは草津だが、描かれている風景は大津」という理解で検討を進めるべきではなく、この地における水文化を尊重されるべきであるというふうに考える。
湖国の特徴である広がりとつながりのある風景を守り育てるためには、隣接もしくは対岸に位置する市との連携を強化し、一体的な水辺の景観形成、歴史的な街道の景観形成に努めていく必要があると考えるが、本市の見解を問う。
答弁:都市計画部長 |
琵琶湖でつながる湖辺の景観や街道でつながる歴史的な景観というものは、一体的な景観形成が図られることが望ましいと考える。そのような中で、昨年2月には湖国の風景の価値を共有し連携した施策の実施について協議し、県土の一体的な景観形成を図ることを目的に、滋賀県と県内7市の景観行政団体により構成する滋賀県景観行政団体協議会が設立されたところである。本市としては、当該協議会の構成員である景観行政団体との連携もさることながら、隣接市である草津市とともに近江八景を基軸にした良好な景観形成に向け、協議を行っていきたいと考えている。
再問 |
草津市は景観行政団体ではないので、滋賀県景観行政団体協議会の構成員ではない。また、協議会は景観法に基づくものでなく、滋賀県独自の取り組みとして「ふるさと滋賀の風景を守り育てる条例」が改正された際に設置されたが、琵琶湖の大景観を守っていく主体というのは、あくまでも各景観行政団体であると考える。
現在、矢橋港が位置していた場所は公園になっており、史跡に指定されている突堤に立っても、地形の変化から対岸を臨むことはできない。しかし、公園には歌川広重によって描かれた矢橋の帰帆のパネルが展示されており、現在の大津に位置するすべての近江八景、例えるなら、琵琶湖の対岸から眺望した湖都大津の大景観が描かれている。わたしは、近江八景という理念を草津市とも共有し、連携を強化してこそ一体的な水辺の景観形成が図られるものと考えており、今後実現が待ち望まれる新たな高度地区の指定においても、その取り組みは必ず生かされると考える。先ほどわたし、大津らしい景観は琵琶湖だというふうに言ったが、それだけではなく、琵琶湖というものに対して理解を深めることが、ひいては矢橋の帰帆もしくは近江八景の理解を深めることにもつながり、そのことが大津の水文化を理解することにつながると思う。
どういった理念のもとで本市が高さ規制を実施するのか。そのことをしっかり理解いただかないと、将来的、それこそ30年後、50年後、次世代にその理念が引き継がれていかなければ、わたしは本市が本来目指すところにたどり着かない、そのように考え、再度見解を問う。
答弁:都市計画部長 |
この席で前の都市計画部長が別れの挨拶をさせていただいた際、草津から見る景観は非常に素晴らしいと熱く語っていたのを思い出した。
景観行政をやっているとき、わたし達は大津の景観を大津の中から見ることに意識があるが、対岸から見る風景がいかに大事かということも、改めて認識をしている。
草津市とは、これまでから情報化の協議や、現在も新産業の協議もしており、一定の連携を図っている。今後、琵琶湖を囲む市同士、とりわけ近江八景つながりを大事にしながら、景観を話し合う場を持てるようにしていきたいと思うし、その中で、例えば子どもたちにどう引き継いでいくのか、われわれの今持っている気持ち、意識というものをどうつないでいったらいいか、お互い謙虚に話し合いをする場ができればと考えている。