市有施設における特定天井の安全対策について( R6. 9)
質問
平成23年3月に発生した東日本大震災においては、大規模空間を有する建築物の天井が脱落する事例が多数発生し、かつてない規模で甚大な被害が生じました。これらの被害を踏まえ、平成26年4月1日、建築基準法施行令39条に第3項及び第4項を追加する改正が施行され、「特定天井」が定義されました。特定天井とは吊り天井であって、①居室、廊下その他の人が日常立入る場所に設けられているもの、②高さが6メートルを越える天井の部分で、その水平投影面積が200平方メートルを超えるものを含む、③天井面構成部材等の単位面積質量が2キログラムを超えるもの、以上のいずれにも該当するものであり、国土交通省の告示において、大臣が定める技術基準に従い、脱落防止対策を講ずべきことが定められています。
この項の一般質問を行うにあたり、脱落によって重大な危害を生ずるおそれがある天井(以下、特定天井)を有する市有施設の現状ついて、建設部建築課に聞き取り調査を行いました。その結果、現時点で11の市有施設、具体的には市民会館(大ホール・ホワイエ)、瀬田公園体育館(アリーナ)、仰木太鼓会館(大ホール)、葛川少年自然の家(プレイルーム・ホールB)、和邇文化センター(客席)、生涯学習センター(アトリウム・客席)、北部地域文化センター(客席)、におの浜ふれあいスポーツセンター(ピロティ・アリーナ)、伝統芸能会館(劇場)、和邇図書館(閲覧室)、北部学校給食共同調理場(調理室)に特定天井が存在するとのことでした。これまでの間、大津市において必要な改修工事が行われたのは、耐震補強工事にあわせて対策を講じられた和邇市民体育館のみであり、同体育館を除く11の市有施設のうち、現時点で長寿命化計画(個別施設計画)を策定されているのは、和邇文化センター、北部文化センター、北部学校給食共同調理場の3施設となっています。
大津市にとって、参考になると考える神奈川県横浜市の取り組み事例を紹介させていただきます。平成27年3月、横浜市は101施設(137室)を対象として、公共建築物天井脱落対策事業計画を策定されました。横浜市防災計画「震災対策編」における災害時の施設用途及び公共施設の耐震化整備方針に準じて対象施設を分類され、目標年次を定められています。既に再整備計画などが検討されている施設については、その中で対策を講じられ、分類別の各施設の優先順位は、脱落危険度、災害時に果たすべき機能の重要度、改修技術や交付金の動向などを勘案しながら定められています。なお、計画終期である令和7年度には、全ての改修工事を完了する見込みと公表されています。
次年度からを計画期間とする次期大津市行政改革プラン案においては、公共施設マネジメントの推進を取り組み方針の一つとされ、公共施設の計画的整備の検討を新たな取り組み項目とされています。公共施設の適正化と個別施設計画に基づく長寿命化事業を推進することについて賛同するものですが、脱落によって重大な危害を生ずるおそれがある天井の安全対策については、できるだけ早期に実現させなければなりません。そのためには、吊り天井の危険度や地震発生時における避難所に指定されているかなどを踏まえ、改修工事の優先順位を明確なものとしたうえで、既存もしくは新たに策定される長寿命化計画(個別施設計画)と整合を図りながら取り組みを進める必要があります。
特定天井に係る法令の改正施行から10年以上が経過しました。脱落防止対策を講じられていないことにより、数多くの市有施設が既存不適格建築物となっている現状に対して、大津市は危機感をより一層、強く持たれるべきと考えます。大津市は今後、どの様な方針のもと、脱落によって重大な危害を生ずるおそれがある天井の安全対策に取り組んでいくつもりなのか。現状における課題認識と特定天井に特化した対応方針を早急に明らかにすることについて、合わせて答弁を求めます。
答弁:総務部長
市有施設における特定天井の安全対策についてでありますが、特定天井を含む非構造部材については、地震発生時の安全性を確保するため、長寿命化改修時に併せて改修を行うなどの対応を検討するよう、平成27年度に該当施設の所管所属あてに通知したもので、整備の必要性を認識していることから、議員お述べの通り、令和5年度に和邇市民体育館を改修したところです。
現在、公共施設マネジメントの取組の中で、施設としての在り方検討に必要な評価方法を整理しており、これを踏まえて大規模改修等の対策の優先順位についても見極めをしていく予定であり、この中で特定天井の改修も検討してまいります。
再質問
質問に当たり、特定天井に係る法令の改正施行から10年以上が経過し、その上で数多くの市有施設が今もって既存不適格建築物になっている現状に対して、危機感をより一層強く持っていただきたいということを申し上げて質問させていただきました。平成27年度、非構造部材についても改修していきましょうということで通知がなされているのですが、結果としてまだ一つの施設、和邇市民体育館しか改修が行われていません。危険だと思います。その認識は持っていただいていると思うのですが、今後の取組に対するお考えを、改めてこの点踏まえてお聞かせいただけないでしょうか。
答弁:総務部長
危機感の認識、どのようにお持ちかというような御質問でございました。施設の維持管理につきましては、その安全対策についても、基本、所管所属で担っているところであります。そういった中で、平成26年に建築基準法施行令の改正が施行され、先ほど答弁申し上げましたが、平成27年度に長寿命化改修時に合わせて改修を行うなどの対応を検討するよう、所管所属宛てに通知したというところでございます。その後、和邇市民体育館については対策を講じたところでございます。そして、和邇図書館ですが、昨年度に基本設計を終えたところでございます。
そういった中で、引き続きほかの施設についても整備の必要性というのは認識をしているところですが、来年度、次期行政改革プラン、これは今まだ案の段階でございますが、取組の項目の一つとして、公共施設の計画的整備の検討というのを掲げているところでございます。これにも基づきながら、先ほど答弁いたしましたけれども、施設としての在り方検討に必要な評価方法を現在整理しているとこでございます。そういったことも踏まえまして、大規模改修等の対策の優先順位について見極めていく予定をしているというものでございます。