大規模災害発生時における業務継続計画の実効性を高めるための取り組みについて( R2. 2)
質問
1点目、業務継続計画の実効性を高めるために必要となる取り組みについて。この項の質問を行うにあたり、熊本県熊本市へ視察に行ってまいりました。同市を訪れるのは、熊本県熊本地方を震源とする地震(以下、熊本地震と申し上げます。)の被災地にて、応急危険度判定活動に従事して以来であり、大規模災害に備えた対応力を強化する必要性をあらためて実感してまいりました。
熊本地震が発生した平成28年の時点において、熊本市は業務継続計画を策定されていましたが、復旧・復興の各段階において必要となる業務、また、業務への人員投入量などの実績を踏まえ、より実効性の高い計画となるよう、以下6点を特に重要な要素としてあげられ、見直しを行われました。
- ①首長不在時の明確な代行順位及び職員の参集体制
- ②電気、水、食料等の確保
- ③本庁舎が使用できなくなった場合の代替庁舎の特定
- ④災害時にも繋がりやすい多様な通信手段の確保
- ⑤重要な行政データのバックアップ
- ⑥非常時優先業務の整理
このうち、非常時優先業務の整理については、内閣府が被災自治体における災害対応時の業務量と災害対応条件により必要人員をシミュレーションできるシステムとして開発した「災害時対応人員管理支援システム(SHIFT)」を活用されています。整理を実施するうえでの課題として、避難所担当職員が固定されているため、人員が確保できないケースがあること、また、人事異動に伴い人員に変更が生じるため、年度代わりにおいて、スムーズに人員確保を行えるよう、システムを構築する必要性をあげておられますが、大津市においても同様の課題が見込まれるものと考えます。
滋賀県は平成31年3月に策定した災害時受援計画のなかで、各市町に対して、業務継続計画、受援計画等を作成するとともに、応援を必要とする人数については、内閣府の 「災害対応人員管理支援システム(SHIFT)」等を利用し、職種、人数、期間を算定しておくことを求めています。 現在、策定が進められている大津市国土強靭化地域計画(案)においても、業務継続計画や災害時受援計画は策定済みであるものの、図上訓練等により検証と見直しを行い、業務継続体制の強化を図ることが記されています。大津市が平成28年10月に業務継続計画を策定した時点において、内閣府は「災害対応人員管理支援システム(SHIFT)」を開発していなかったことを踏まえ、熊本市における取り組みも参考にされながら、あらためてこのシステムを活用することを提言するものです。
大津市は今後、どういった取り組みのもとで非常時優先業務の再整理を行っていく方針なのか、見解を求めます。
2点目、大津市災害等対策基本条例のもと、業務継続計画に特化した条例を新たに制定することについて。平成30年3月、熊本市は「熊本市非常時優先業務の実施のための業務継続計画の策定等に関する条例」を制定されました。地域防災計画そのものの実効性を高め、市民生活の早期の復旧等を図ることを目的としており、業務継続計画に係る訓練、検証及び見直し、大規模災害時における通常業務の休止及び非常時優先業務の実施、行政執行の特例、職員の参集義務などが規定されています。
熊本地震が発生した際、業務継続計画を発動されたものの、各部署において通常業務の休止・縮小に対する判断にばらつきが出るなど、十分に計画が機能せず、初動対応の人員に不足をきたしたことが条例制定の背景となっています。熊本市はその原因として、業務継続計画の周知・実施訓練が不足をしていたこと、また、各部署が所掌する法的責務がある事務、すなわち、通常業務を休止する等の判断が難しく、震災関連業務への大胆な人員投入が躊躇されたこと等をあげておられますが、大津市においても同様の事態は起こりえると危惧するものです。
業務継続計画とは、業務の継続ではなく、通常業務の中止を行う計画であると意識することが大切であると、熊本市への視察を通じて学びました。地域防災計画は災害対策基本法を根拠として策定されていますが、業務継続計画には法的根拠は存在しません。
大津市災害等対策基本条例において、市は、災害又は危機の発生時において業務を継続し、又は早期に復旧させるために必要な事項を定めた計画を作成すると規定されていますが、大規模災害発生時における救護の体制を被災状況に見合ったものとするためにも、大津市災害等対策基本条例のもと、業務継続計画に特化した条例を新たに制定することを提言するものです。
条例において、大規模地震発生時は通常業務を休止し、非常時優先業務に行政資源を集中すべきことを明らかにするとともに、その際に必要となる公の施設の利用や徴収金等に係る特例を定めることは、業務継続計画の実効性を高め、市民に対して説明責任を果たすうえにおいても、意義深い取り組みであると考え、大津市長に見解を求めます。
答弁:総務部長
1点目、災害対応人員管理支援システム、SHIFTの活用についてでありますが、本市では平成28年10月に、最大の被害想定を前提とした大津市業務継続計画を策定し、非常時優先業務と必要人員及びそれに伴う不足人員を算出し、それをもとに受援計画を策定し、災害に備えているところであります。議員御提案の当該システムでは、災害対応の基礎データをあらかじめ入力しておくことで、災害の規模や被害の程度、状況に応じた対応人員と復旧予定日の算出が可能となること、また応援要請人数の把握を迅速に行えるといった点から、大変有効なシステムであると考えております。今後、本システムの他都市の取り組みや導入状況を調査し、検討してまいります。
2点目の業務継続計画に特化した条例を新たに制定することについてでありますが、熊本市の条例は、議員お述べのとおり、平成28年の熊本地震の教訓を踏まえたものであり、通常業務の休止の判断の難しさなど、本市としても大いに参考とすべきものと考えるもので、その実効性等について今後調査研究してまいります。
再質問
1点再問させていただきます。業務継続計画に特化した条例を制定することについてです。 今、実効性について調査を改めて行っていくという答弁がございました。もう少し詳しく答弁いただけませんでしょうか。
答弁:総務部長
実効性の詳しい内容というか、業務継続計画が実効性を有するためにはどうするかという話になると思います。計画をつくられて久しいわけですけれども、これを定着させるために、やっぱりいざというときにこの計画が発動できるかどうか。そのためには、やはりこの計画をもとに、例えば、参集訓練や安否確認訓練、そういった訓練が必要であること、また電気、水、食料などの必要資源の定期的なチェック、そして何よりも職員の研修、こういったものをあわせてやっていく必要があると。それに伴ってこの業務継続計画の実効性が発揮できるというふうに考えておりまして、そういったことが実効性の確保に必要なことであるというふうに考えております。
また、この計画についての定期的な見直し作業についても、常時必要に応じてやっていく必要があるというふうに考えております。
再々質問
業務継続計画に特化した条例の意義について、一定お認めいただいたうえでの検証や調査なのか、改めて答弁求めます。
答弁:総務部長
この条例の制定とあわせて、こういったことも含めて並行してやっていく必要があるのではないかという観点から、先ほど申し上げたとおり、実効性の検証をしていきたいということでございます。