大規模地震発生時において施設管理者等が避難所施設の安全性を確認するために必要となる平常時からの取り組みについて( R4. 6)

質問

令和4年5月、危機・防災対策課主催による避難所担当員を対象とした研修会が開催されました。公益社団法人滋賀県建築士会大津地区委員会・同湖西滋賀地区委員会は大津市と災害時における避難所施設等のセーフティチェックに関する協定を締結しており、同会に所属される被災建築物応急危険度判定士も研修に参加されました。大地震発生時、小中学校体育館を避難所として開設するにあたり、まずもって、施設管理者または大津市職員である避難所担当員が安全確認を行い、その後、災害対策本部からの指示に基づき建設部建築課を経由して同判定士が派遣されることになります。大規模地震の発生に備え、大津市ならびに教育委員会が主体となって取り組むべき事前準備があるとの認識に立ち、以下、3点、指摘提言を行います。

 

1点目、大規模地震発生前における構造体等の現状を記録したカルテの作成について。

内閣府が示す「大規模地震発生直後における施設管理者等による建物の緊急点検に係る指針」において、建築の専門知識を有しない施設管理者等が避難所施設の被害状況をより正確に確認するためには、平常時におけるひびわれ等を事前に調査し、記録しておくことが必要と記されています。大規模地震による損傷か否かを判別するために欠かすことのできない取り組みと認識していますが、大津市においてはカルテが作成されておらず、定期的に更新する仕組みも構築されていません。避難所担当員を対象とした研修当日、参加された職員さんからも不安の声が聞かれました。
 
リンク:谷ゆうじ活動レポート 2022.05.20 避難所担当員研修
 
建築物や建築設備等の状況は人間の体と同様、様々な要因によって変化していきます。建築基準法では、防災上の観点から定期報告制度が設けられており、不特定多数の人が使用する特定建築物及び特定建築設備等について、所有者又は管理者は、その敷地、構造及び建築設備等の維持管理状態に関し、専門の技術者に調査又は検査させ、その結果を特定行政庁に報告することが義務づけられています。
大津市においては、建築課が当該点検ならびに法令では対象とならない建築物の任意点検を実施されており、地盤の沈下、コンクリートのひび割れ、鉄骨の腐食等の劣化状況について、3年以内ごとに調査されています。当該カルテを早急に作成し、内容の更新を適宜行っていくための仕組みを先に述べた法定点検の結果を反映させることで構築されてはと提言するものです。大津市は今後、どういった方針のもと、内閣府が指針で示す避難所施設における構造体等の現状を記録したカルテを作成していく方針なのか、見解を求めます。

 

2点目、避難所施設被害チェックリストの見直しについて。大津市は避難所施設の構造毎に「避難所施設被害チェックリスト」を作成しています。施設管理者や避難所担当員は地盤や建築物の損傷等に対するいくつかの設問に対し、一部の項目を除き、A・B・Cに区分された被害状況と照らし合わせて安全性を確認し、その結果を集計したうえで避難所の開設が可能か不可能かを判断することになります。Cの答えが一つでもある場合は「危険」と判断され、避難所の開設は不可、Bの答えがある場合には「要注意」と判断され、同じく、避難所の開設は不可、Aのみの場合は「安全」と判断され、避難所開設は可能となります。
 
いずれの結果であったにせよ、災害対策本部事務局に被災建築物応急危険度判定士の派遣を要請することになりますが、公益社団法人滋賀県建築士会大津地区委員会・同湖西滋賀地区委員会に所属し、名簿に登録されている同判定士の人数は限られており、現状においては、応急危険度判定の実施までに相当な時間を要することも想定しておかなければなりません。B判定区分において、「少し」「わずか」といった被害状況が軽微と受け取れるような表現が用いられていますが、より迅速かつ被害状況に見合った判断が可能となるよう、避難所施設被害チェックリストの内容をあらためて見直されるべきと提言するものです。同チェックリストに対する現状の評価と今後の見直し方針について見解を求めます。

 

3点目、避難所担当員が配備されている小中学校の施設管理者ならびに他の公共施設の管理者を対象とした研修のあり方について。大津市は危機・防災対策課主催による避難所担当員を対象とした研修会を継続して開催していますが、小中学校が開校している時間帯においては、避難所開設の可否を学校職員に判断いただくことになります。今後は教育委員会と連携を図りながら、全市域を対象として、小中学校の施設管理者にも継続して研修を受講いただく機会を設けられてはと考えます。そのうえで、避難所担当員と連携を図りながら、安全確認の習熟度を共に高めていただきたいと期待するものです。また、現在、大津市において避難所担当員の配備は小中学校の体育館に限定されていることを踏まえ、指定管理者施設を含めた大津市が設置する他の公共施設においても円滑に避難所開設の可否が判断できるよう、取り組みを強化されるべきと考えます。

大津市は今後どういった方針のもと、避難所担当員が配備されている小中学校の職員ならびに他の公共施設の管理者を対象とした研修に取り組んでいくつもりなのか、見解を求めます。
 

答弁:危機管理監

1点目の大規模地震発生前における構造体等の現状を記録したカルテの作成についてでありますが、現在、本市では、避難所担当員の初動対応セットの中に施設の建築図面や建物内外の写真、過去の定期点検結果報告書を配備し、施設の損傷が大規模地震によるものかどうかの判断材料とすることとしていますが、カルテはまだ作成していません。議員お述べのとおり、建築基準法に基づく定期点検等の結果を用いることで、カルテの作成・更新が円滑に進むと考えられることから、今後、避難所担当員が判断しやすくなるようにその活用を検討してまいります。
 
2点目の避難所施設被害チェックリストの見直しについてでありますが、内閣府の「大規模地震発生直後における施設管理者等による建物の緊急点検に係る指針」に添付されているチェックシートにおいては、項目ごとに「はい」か「いいえ」かの2者択一式でチェックすることとされており、建築の専門知識を有しない者にも一義的でわかりやすいと考えられることから、今後、本市において避難所の開設可否の判断が迅速かつ確実にできるよう、2者択一式の採用を含め、チェックリストの見直しを検討してまいります。
 
3点目の避難所担当員が配備されている小中学校の施設管理者ならびに他の公共施設の管理者を対象とした研修のあり方についてでありますが、本市では避難所担当員研修を毎年5月に開催しておりますが、これまで施設管理者は受講対象としていませんでした。今後は、同研修会への参加を要請することなどを含め、更なる取組に努めてまいります。
 

再質問

大規模地震発生前における構造体等の現状を記録したカルテの作成について。今後、法定点検の結果を反映できるよう、検討されていくとの答弁でした。大地震はいつ発生するかわかりません。早急な対応が求められます。早速、今年度から取り組んでいただければと期待するものですが、そのように理解してもよろしいでしょうか。
 
次に、研修のあり方について。教育委員会と課題認識を共有された上で議論されるべきと考えます。この点を踏まえて改めて答弁求めます。

 

答弁:危機管理課 

定期点検結果報告書について、地震発生時の緊急点検時に活用しやすい内容について検討した上で、これを早期に活用していくため、今年度中から取り組みたいと考えております。続きまして、教育委員会との連携のあり方について。例えば小中学校の管理者には学校長会の後に防災部局から説明のお時間を取っていただくことを考えており、教育委員会と協議していきたいと考えています。

関連する 議会活動の
指摘・提言
  • 防災拠点施設でありながら必要な耐震化が今もって図られていない本庁舎の整備に向けた取り組みについて(R5.9)
  • 大地震の発生を想定した復興事前準備の推進に向けた取り組みについて(R5.9)
  • 大地震発生時に指定避難所の開設可否を速やかに判断するために必要となる平常時の取り組みについて(R5.6)
  • 大津市庁舎整備基本計画の策定に向けて必要となる今後の取り組みについて(R5.3)
  • 大津市庁舎整備基本計画の策定に向けて必要となる今後の取り組みについて(R4.12)
  • 市民生活に深刻な影響を及ぼす豪雨災害への対応力強化について(R4.9)
  • 大津市庁舎整備推進本部会議において皇子山総合運動公園を「優先して検討を行うおおよその候補地」として決定されるまでの経過と庁舎移転整備に対する大津市長の課題認識について(R4.6)
  • 大規模地震発生時において施設管理者等が避難所施設の安全性を確認するために必要となる平常時からの取り組みについて(R4.6)
  • 大津市避難所施設応急危険度判定士の制度構築に向けた取り組みについて(R4.3)
  • 防災拠点施設でありながら必要な耐震化が今もって図られていない本庁舎の整備に向けた取り組みについて(R4.3)
  • 避難情報の発令を危険な場所からの避難行動につなげるための取り組みについて(R3.9)
  • 庁舎整備基本構想策定に向けた取り組みについて(R3.9)
  • 大規模地震発生時に指定避難所を速やかに開設するために必要となる取り組みについて(R3.6)
  • 庁舎整備基本構想の策定にあたって市民意見を聴取しない理由と同基本計画の策定着手までに行うべき取り組みについて(R3.6)
  • 大津市新型インフルエンザ等対策業務継続計画の実効性を高めるための取り組みについて(R2.11)
  • 防災拠点施設でありながら必要な耐震化が今もって図られていない本庁舎の整備に向けた取り組みについて(R2.11)
  • 防災拠点施設でありながら必要な耐震化が今もって図られていない本庁舎の整備に向けた取り組みについて(R2.9)
  • 火災予防対策に資する飛沫防止用シートの適切な設置について(R2.6)
  • 大規模災害発生時における業務継続計画の実効性を高めるための取り組みについて(R2.2)
  • 防災拠点施設でありながら必要な耐震化が今もって図られていない本庁舎ならびに中消防署の整備に向けた取り組みについて(R2.2)
  • 災害対応力の強化に向けた取り組みについて(R1.11)
  • 災害対応拠点でありながら必要な耐震化が今もって図られていない本庁舎の整備に向けた取り組みについて(R1.6)
  • 中消防署の移転整備に向けた取り組みについて(H30.11)
  • 事前復興計画の策定に向けた取り組みについて(H30.11)
  • 市有施設における擁壁の適切な維持管理について(H30.9)
  • 地震発生に伴う避難所開設を円滑かつ安全に行うための取り組みについて(H30.9)
  • 通学路の安全対策について(H30.9)
  • 中消防署用地の選定に向けた取り組みについて(H30.9)
  • まちづくり協議会がコミュニティセンターの運営を担う上での課題について(H30.6)
  • 防災上の課題となっている本庁舎、中消防署の整備に向けた取り組みについて(H30.2)
  • 庁舎整備基本計画の策定に向けて必要となる取り組みについて(H29.9)
  • 危機管理体制の強化について(H29.6)
  • 庁舎整備の推進に向けた取り組みについて(H29.2)
  • 土砂災害計画区域の指定が庁舎整備計画に与える影響について(H28.11)
  • 大津びわこ湖競輪場跡地の利活用に向けた取り組みについて(H28.9)
  • 防災力の強化につながる取り組みについて(H28.2)
  • 隣接国有地を活用した庁舎整備のあり方について(H28.2)
  • 隣接国有地を活用した庁舎整備のあり方について(H27.11)
  • 市民センターにおける災害対応力の強化について(H27.6)
  • 市民センター機能等のあり方検討事業について(H27.2)
  • 家具等転倒防止対策の向上に向けた取り組みについて(H26.11)
  • 大規模盛土造成地の変動予測調査について(H26.11)
  • 家具転倒防止対策の推進に向けた取り組みについて(H26.6)
  • 市有建築物の耐震化に向けた取り組みについて(H26.2)
  • 家具等の転倒防止対策について(H24.2)
  • 家具転倒防止器具の設置率を 向上させる取り組みについて(H23.9)
  • 庁舎本館棟の耐震化について(H20.12)
  • 新型インフルエンザ対策について(H20.9)
  • 災害時要援護者支援について(H20.6)
  • 庁舎のあり方について(H20.2)
  • 防災対策について(H19.12)