大地震・巨大地震発生時における災害対応力の強化に向けた取り組みについて( R6. 3)
質問
令和6年1月1日、石川県能登地方を震源とするマグニチュード7.6の大地震が発生しました。被害を受けられた皆さまに対しまして、心よりお見舞い申し上げますと共に被災地の一日も早い復旧・復興をお祈り申し上げます。
大地震はいつ、どこで発生するか分かりません。大津市においては南海トラフ巨大地震が発生した際の最大震度は6強と予測されており、いくつもの断層がつらなる琵琶湖西岸断層帯は市街地と近接しています。甚大な建物被害や人的被害が想定されるなか、災害対応力の強化は本市にとって喫緊の課題であることから、以下、3点、指摘・提言を踏まえて質問を行います。
1点目、受援力向上に向けた取り組みについて。平成30年3月、大津市は平成28年度に策定された大津市業務継続計画を補完する計画として、大津市災害時受援計画を策定しました。大地震・巨大地震が発生した際、大津市だけでは対応できない事態に備えるための計画であり、他の自治体や機関など多方面からの支援を最大限活かすため、地域防災計画と整合を図りながら、人的、物的支援の受け入れ手順やその役割など、受援に必要な体制を整備することを目的としています。
大津市は受援力の向上を図るため、災害時受援計画の見直しにあたっては、国・県・他都市の動向や知見等を取り入れ、さらには、訓練等を通じて関係機関等への周知と理解醸成を図ることを当該計画に定めています。しかしながら、策定から6年が経過しようとしているものの、これまでの間、災害時受援計画の見直しが行われたのは、指定避難所及び災害時応援協定の追加ならびに市役所組織の改編に伴う変更のみと認識しています。長期に渡るコロナ禍の影響により、計画的な取り組みが困難であったことは承知をしていますが、大地震・巨大地震はいつ発生するか分かりません。
平成28年4月の熊本地震発生後、大津市は熊本県大津町に多くの職員を派遣されました。大津市災害時受援計画の策定にあたっては、災害対応業務に従事くださった際の教訓が随所に反映されており、計画の実効性を高めることにつながったものと高く評価するものです。令和6年1月1日以降、大津市は能登半島地震で被害にあわれた被災地に職員を継続して派遣されています。大津市災害時受援計画及び大津市企業局災害時等受援計画の推進と見直しを図る際には、能登半島地震における被災地支援の経験をぜひとも活かしていただきたいと願うものです。
大津市はPLAN・DO・CHECK・ACTIONからなるPDCAサイクルを活用し、災害時受援計画の推進と見直しを図るとされていますが、今後どの様な方針のもとで受援力向上に資する取り組みを進め、大津市災害時受援計画の実効性を高めていくつもりなのか。当該計画に定められた受援対象業務シートの管理状況と災害時応援協定の実効性強化に向けた取り組み、受け入れ体制の充実に向けた人的支援、物的支援の準備状況とあわせて答弁を求めます。
2点目、避難所施設の安全確認について。大津市においては、小中学校体育館を避難所として開設するにあたり、まずもって、施設管理者または避難所担当員を務められる市職員が安全確認を行い、判断がつかなかった場合においては、災害対策本部の意思決定のもと、建設部建築課からの依頼に基づき、大津市が応急危険度判定業務(セーフティチェック)に関して協定書を締結する公益社団法人滋賀県建築士会大津地区委員会ならびに同湖西滋賀地区委員会に所属する被災建築物応急危険度判定士が派遣されることになります。しかしながら、大津市が作成支援に取り組まれている学区避難所運営マニュアルのひな形においては、施設の安全確認を行う主体が不明確な記述となっています。大地震・巨大地震発生時に混乱が生じないよう、大津市避難所運営マニュアルと整合性を図られるべきと考え、今後の対応方針について見解を求めます。
また、私は令和3年6月ならびに令和4年2月通常会議において、静岡県静岡市や浜松市の取り組み事例を参考とし、学区単位で被災建築物応急危険度判定士を事前に配備する制度の創設を提言しました。震度6弱以上の地震が発生した際には、事前に割り当てられた各支所に速やかに参集いただき、支所長(初動支所班長)から応急危険度判定の依頼を受けていただくことで、避難所開設に伴う安全確認を円滑に行っていただくことが可能になると考えます。被災建築物応急危険度判定の認定に係る研修を主催される滋賀県と連携を図りながら、学区単位で同判定士を事前に配備する制度を創設することについて、見解を求めます。
3点目、防災井戸の整備に向けた取り組みについて。水は人が生きていくうえにおいて必要不可欠なものであり、トイレ、お風呂、洗濯など、避難生活を送るうえにおいて、なくてはならないものです。地震の影響によって、地中に埋設されている水道管が破裂をした場合、復旧に相当な時間を要する恐れがあることから、大津市においても、避難所となる小中学校や都市公園等に防災井戸を整備されることを提言します。停電によって、水をくみ上げる電動ポンプが作動しないことを想定し、手押しポンプを併設する必要がありますが、災害対応力の強化に資すると考えます。計画的に整備基数の拡充を図ることについて、本市に見解を求めます。
答弁:危機管理監
1点目の受援力向上に向けた取り組みについての、今後どのような方針のもとで受援力向上に資する取組を進め、大津市災害時受援計画の実効性を高めていくのかについてでありますが、大津市災害時受援計画では、人的支援の窓口として災害対策本部事務局内に「人的受援班」を設置することとし、また、災害時優先業務のうち、1日あたりの必要人数が5人以上の業務や過去の災害で受援対象となった業務について、その概要や必要人数、マニュアルの有無等を記載した「受援対象業務シート」を作成し、円滑な人的支援の受け入れ体制の整備を図ることとしているところでございます。物的支援の受け入れ体制につきましては、災害対策本部事務局内に「物資調整班」を設置することとし、平成30年度に「災害時物資供給マニュアル」を策定し、物流の専門家と連携して避難所まで物資を確実に届ける仕組みを構築いたしております。
また、総合防災訓練においては、災害時応援協定を締結している滋賀県トラック協会大津支部と物資の輸送に係る訓練を実施するなど、連携の強化に努めているところです。今回、能登半島地震に際し、応急給水、水道復旧、DHEAT、被災建築物応急危険度判定、被災家屋等の公費解体制度の受付、住家被害認定調査及び避難所運営など、現地の要請を踏まえた応援派遣を通じて、受援対象業務についての新たな知見の蓄積が進むと考えております。今後は、当該計画の課題を洗い出すとともに、図上訓練の実施や、マニュアルが未策定の受援対象業務の見直しなど、受け入れ体制の充実と県の災害時受援計画との整合を図りながら本市の受援計画の実効性を高めてまいります。
次に、2点目の避難所施設の安全確認についてのうち、1つ目の施設の安全確認業務にかかる、大津市避難所運営マニュアルと学区避難所運営マニュアルとの整合性についてでありますが、大津市のマニュアルにおいては、緊急時に避難者にも開設・運営を担っていただくことを、また一方で、学区避難所運営マニュアルのひな形では、施設管理者の到着を待たずとも開設が進むよう、避難者が主体となって開設することを前提とする旨を記述しており、市の避難所担当員及び施設管理者による開設を原則としていることに誤解が生じかねないそういったものとなっているところでございます。今後、記述の整合を図りますとともに、自主防災組織等に対し、このことや避難所を開設する上で最優先となる施設の安全確認及び応急危険度判定業務の手順について、十分に説明し、共通理解を図ってまいります。
次に、2つ目の学区単位で応急危険度判定士を事前に配備する制度を創設することについてでありますが、複数の避難所を同時に、かつ早期に開設する必要がある大規模災害時において、有効な方策であると考えるものの、相当数の資格者の確保が必要となると考えますことから、引き続き、滋賀県と連携し、被災建築物応急危険度判定士の登録の促進を図ってまいります。
次に、3点目の防災井戸の整備に向けた取り組みについてでありますが、防災井戸は、大規模災害によるライフライン途絶時において、トイレなどに用いる生活用水を確保するための手法として、有効であると認識をいたしております。本市といたしましては、施設が多数に及ぶなかで、管理方法や財源の確保等について、課題も多いと考えられることから、他都市の事例を調査研究してまいります。
再質問
まず1点目の受援力向上に向けた取組についてです。業務によっては、マニュアルが未整備の計画があるとの課題認識をお示しいただきました。実際にどれぐらいの数なのでしょうか。また、PDCAサイクルを活用して、受援計画を見直していくことについては、策定された時点から述べられていることではあるのですが、未整備となっている受援業務対応をどういったスケジュール感で取り組んでいかれるのか、お聞かせをください。
次に、3点目の防災井戸の整備に向けた取組についてです。有効性については認識を共有いただけたものと理解いたしました。その上で、管理方法であったり、財源が課題であるといった認識もお述べをいただいております。繰り返しで恐縮なんですけれども、災害発生時、水は本当に大事です。今の答弁を伺っていますと、有効性は認識されるものの、整備の必要性についてはどのように実感されているのかなと感じるところでございます。この点、お考えをもう少し詳しくお聞かせいただけないでしょうか。
再々質問
1点目でございます。現在マニュアルが未整備の受援業務に関して、数はどれぐらいかということと、どういったスケジュール感でこの整備に取り組んでいくかということでございます。これについてでございますけれども、今現在、手元に数についての資料はございませんけれども、実際それぞれのシートに基づいて必要なものを上げていくというところで、まだ整備はできていないというものがあるところは承知をしているところです。
今後でありますけれども、先ほども初問でお答えをさせていただいたんですけれども、今回能登半島地震で職員がかなり現地へ入らせていただいて、応援に入っております。今後、こうした取組、派遣の業務で知り得る新たな知見、これは復興のところも含めてですけれども、こういった新たな知見等も踏まえた上で、PDCAサイクルというところでございますけれども、今回の新たな知見も含めて、今の計画をさらに動くものと、そういったものを考えた上で図上訓練を実施し、これは現実ではありませんですけれども、計画の実行、ドゥーというところ、そして訓練の結果を分析して人員制度等の見直し、そして業務管理シートの改善が必要な部分があればそこを改善していくというような形でPDCAサイクルを活用して、計画の推進を図りたいというふうに考えてございます。
そして、2点目の災害井戸について、必要性をどのように実感しているかという御質問についてでありますけれども、実際井戸につきまして、先ほど初問でお答えさせていただいた管理の部分の課題というところなんですけれども、実際にたくさんの数がございます。そして、定期的に自治体がそれぞれ井戸の水質検査を実施するというところがございます。それが多数に及ぶと。そして、井戸にふさわしい周囲の環境の維持をどうしているのかとか、そういったことを実際に安全に井戸を使っていただくためには、それをどうして確実に実施していくのかというところを考えた上で、設置の方法を考えていくという必要があると考えているところでございます。
また、議員お述べのとおり、災害時の飲料水、さらには生活用水の確保というのは非常に大切な事項でございます。一方で、地域においては浄水機器を設置して活用しようとしたり、例えばほかにも民間の井戸を調査して、どれが活用できるか調査をしているというような取組もございます。また、本市の浄水場でありますとか配水池の災害時の飲用水、それと生活用水の貯留と供給能力、こういったことも踏まえることも有用であるというふうには考えてございます。こうしたこと含めて、研究を積み上げていきたいなというふうに考えているところでございます。
再々再質問
受援力向上に向けた取組についてです。私、初問で受援対象業務シートの管理状況について、通告に基づきお聞きをさせていただいております。まだ未整備の受援業務の計画等がおありだということで答弁いただきましたので、再質問させていただいたのですが、数については把握をいただけていないのか、答弁いただけませんでした。もう一度確認させていただきたいんですけれども、受援対象事業シートを管理いただいて、見直していただくに当たっては、現状を正しく把握していただくことは大前提になってくると承知をしております。もう一度お伺いさせていただきますが、マニュアルが未整備となっている受援対象業務の計画について、現状をどのように認識をされておられるのでしょうか。もう少し詳しくお聞かせをください。
答弁:危機管理監
受援力の向上に関して、業務シートの見直しに関しては、現状把握の上進めていくべきというようなことでございました。どのように進めていくのかというところでございます。先ほどの再問いただいたお答えの中で、現在手元に資料がないというふうに御答弁申し上げたところですけれども、マニュアルが必要な業務に関して82業務ございます。そのうちの42業務が未策定というところでございます。
訓練ですとか、本来は図上訓練等を反映して、いろんな手入れをしていくというのが本来でございますけれども、議員が初問で述べていただいたとおり、実際新型コロナウイルス感染症対策にずっといろいろ従事をしていくというところで、なかなか着手ができなかったというところで、実際シート自体も追加、修正ができていないという状況でございます。先ほどからも申しておりますとおり、今回の能登半島地震への対応も職員の派遣をいたしております。こうして得た教訓を生かしながら、計画自体の更新、シートの更新、また定期的な見直しも含めて、マニュアルの策定を進めてまいりたいというふうに考えてございます。