農薬使用の適正化に向けた取り組みについて( H22. 11)

質 問

 本年度、農薬の安全かつ適正な使用、使用中の事故防止、環境に配慮した農薬の使用等を推進するため、全国で農薬危害防止運動が展開された。実施主体に保健所設置市が含まれることから、大津市においても厚生労働省及び農林水産省が定めた農薬危害防止運動実施要綱に基づき、大津市農薬危害防止運動実施要領を策定し、実施期間を7月から9月までの3カ月とされた。 

 1点目、大津市農薬危害防止運動実施要領で定められた内容に基づき、取り組みの状況と活動の成果について問う。はじめに、危害防止対策の実施体制について。本市は、農薬を取り巻く社会情勢を踏まえ、関係諸法令の周知を図るとともに、農薬の性質及び作用、危害の防止方法、農薬の適正な販売、使用及び保管管理の方法などを広く周知徹底し、農薬による事故等を極力防止することを実施目的とした。この達成のために、大津市は実施要領において、農林水産課及び保健総務課、他の関係部局、関係行政機関、関係団体などの緊密な連携のもとに運動を実施すると定められたが、ここで言う関係部局とは、どこの部局を意味しているのか。また、緊密な連携を図るためには、まず庁内において実施要領に記された内容の周知を図り、農薬危害防止運動実施要綱に対する理解を深める必要があったと考えるが、どのようにしてこれに取り組まれたのか、見解を問う。 

 次に、実施事項として掲げられた内容に基づき問う。広報等を活用した啓発活動を実施するとし、各種会議、研修会等において農薬の安全使用を啓発するとしたが、どういう会議、研修会を、どの程度開催してきたのか、啓発の内容及び参加者実績をあわせて答弁願う。また、農薬の安全・適正使用による危被害防止対策を実施するとし、ほ場のみならず、学校、病院、保健所、その他公共施設内及び住宅地に近接する場所において農薬を散布する場合は、農薬の飛散が周辺に影響を及ぼすことがないよう、事前に周辺住民や学校、施設等に散布日時などの情報を周知するとともに、農薬の飛散を防止するための必要な措置を講じるよう指導するとされた。だれを対象に、どのような体制で指導を実施したのか、見解を問う。期間中に限らず、今後も保健所設置市として、積極的に運動を展開していく必要があると考えるが、大津市がこの運動の実施主体として十分な活動を展開したとは思えない。ホームページ上での情報提供、関係する団体への資料送付等については実施されたと認識しているが、それだけでは農薬の安全かつ適正な使用、使用中の事故防止、環境に配慮した農薬の使用等を推進することはできないと考える。本市は、今年度の反省を踏まえ、今後いかにしてこの運動に取り組んでいくつもりなのか、見解を問う。

 2点目、住宅地等における農薬使用の現状について問う。平成19年1月31日、農林水産省消費安全局並びに環境省水・大気環境局は、連名で局長通知、住宅地等における農薬使用について、以下通知を滋賀県に発出した。住宅地等において病害虫を防除するに当たり、農薬の散布を行う土地、施設の管理者、殺虫、殺菌、除草等の病害虫防除の責任者、農薬使用委託者、農薬使用者等が遵守すべき事項を定めたもので、農薬の適正な使用を推進し、人畜への被害防止や生活環境の保全を図ることを目的とした通知であると理解している。大津市及び関係行政機関は、自らが管理する土地、施設において農薬を散布する場合、農薬の飛散が周辺住民、子ども等に健康被害を及ぼすことがないよう、通知の内容を遵守し、また、農薬使用を委託する場合においても、農薬使用者に通知内容の遵守を求める必要があると考えるが、私が調査した結果によると、通知の存在そのものが庁内において十分周知されていないと思われる仕様書、見積書、報告書が多数存在した。以下、通知で遵守が求められている事項について問う。農薬使用者等は、病害虫やそれによる被害発生の早期発見に努め、病害虫の発生や被害の有無に関わらず、定期的に農薬を散布するのではなく、病害虫の状況に応じた適正な防除を行うことが通知で求められている。大津市は、どのような方法、体制で早期発見に努めているのか、見解を問う。特に公園等における病害虫駆除にあっては、被害を受けた部分の剪定や捕殺等を優先的に行うこととし、これらによる防除が困難なため、農薬を使用する場合にも、捕殺、塗布、樹幹注入等、散布以外の方法を活用するとともに、やむを得ず散布する場合においても、最小限の区域における農薬散布にとどめることが求められている。大津市は、どういう方針でこれに取り組んでいるのか、あわせて見解を問う。また、農薬使用者等は、農薬取締法に基づいて登録された当該防除対象の農作物等に適用のある農薬を、ラベルに記載されている使用方法及び使用上の注意事項を守って使用することが通知で求められている。農薬使用者等には、農薬の散布を行う土地、施設の管理者も含まれるが、日々、多くの子どもが通い、年間を通じて多くの農薬が散布されている幼稚園、小中学校において、これが守られていることを大津市教育委員会はどのようにして確認をしているのか。例えば、アメリカシロヒトリの幼虫駆除などで多く使用されている有機リン系殺虫剤、ディプテレックス乳剤、農薬の種類をあらわす言葉はDEP乳剤であるが、農薬使用者から提出のあった見積書には、農薬を組成する化学物質の成分名トリクロルホンの希釈液とだけ書かれ、農薬の名称は書かれていなかった。また、希釈倍率については、報告書にも記載がなく、水に薄められた希釈後の散布数量だけが報告されている。農薬使用者には、農薬を使用した年月日、場所及び対象植物、使用した農薬の種類または名称、使用した農薬の単価面積当たりの使用量または希釈倍数について記帳し、一定期間保管することが通知で求められている。今後は、通知に基づき記帳された内容を、土地、施設管理者として正しく保管すべきと考え、見解を問う。

 3点目、周辺住民に対する事前周知のあり方について問う。農薬使用者及び農薬使用委託者は、農薬を散布する場合、事前に周辺住民に対して農薬使用の目的、散布日時、農薬使用の種類について十分な周知に努めなければならない。特に、農薬散布区域の近隣に学校、通学路がある場合には、当該学校や子どもの保護者への周知を図り、散布の時間帯に最大限配慮しなければならないが、幼稚園、小中学校において散布される場合において、十分な周知が図られていない。大津市教育委員会は、これまでどういう認識のもと、どういう形で周辺住民に周知を図ってきたのか、見解を問う。また、大津市教育委員会は、病害虫の駆除について、幼児、児童生徒の健康安全面での環境整備として必要であり、また、最近はアレルギー疾患を持った子も多く、害虫に刺されたことにより発作を起こしたりすることも考えられることから、特に必要であるとしている。しかしながら、さらなる子どもの健康と安全を考えるのであれば、農薬使用に頼らない病害虫駆除を原則とすべきであり、一律に薬剤を使用すべきではないと考える。大津市は、農薬飛散による被害の発生を防ぐため、『学校、保育所、病院、公園等の公共施設、街路樹及び住宅地に近接する森林等及び住宅地に隣接した家庭菜園・市民農園を含む農地の管理にあたっては、農薬の飛散を原因とする、住民や子ども等への健康被害が生じないよう、できるだけ農薬を使用しない管理を心がけましょう』と自らのホームページで啓発をしている。今後、大津市教育委員会は、どういう形で病害虫の防除に取り組んでいくべきと考えているのか、見解を問う。

 4点目、病害虫駆除を実施する際における指針策定に向けた取り組みについて問う。大津市と同じ中核市、岐阜市においては、人の健康と安全を確保し、環境への負荷の低減を図るため、総合防除の考え方に基づく基本方針を策定し、建築物と一体的に管理される周辺の植栽、公園の樹木、街路樹等を含む市有施設において病害虫の防除を行う際の指針とされている。本年5月には環境省水・大気環境局が農薬飛散によるリスク削減に向け、『公園・街路樹等病害虫・雑草管理マニュアル』を策定したが、本市は、今後どういう方針のもとで病害虫の駆除を行っていくのか、見解を問う。

 最後5点目、化学物質過敏症対策のさらなる推進について問う。平成21年6月定例会において、化学物質過敏症については、生活全般にわたる対策が必要になってくることから、大津市として何らかの指針を策定すべきではないかと質問した。これに対して大津市は、まずは市内部において、この問題に関係する部署間での連携を取り、それぞれが持つ情報を集め整理をし、共有することから始め、その上で他の先進事例なども参考にしながら、今後、大津市として取り組むべき方向や内容について研究をしていきたいとの趣旨で答弁されたが、これまでの間、どういう取り組みをされてきたのか、見解を問う。

 化学物質過敏症対策における相談窓口を保健総務課内に設置し、またホームページの内容も充実させるなど、これまでの取り組みに一定の評価をするものであるが、大津市自らが原因物質の一つとしている樹木に発生する病害虫の防除を目的に散布される農薬に対する取り組みは、土地、施設の管理者として十分なものではない。今後、建築物と一体的に管理される周辺の植栽、公園の樹木、街路樹等を含む市有施設を対象に検討される農薬使用の方針も踏まえ、大津市として化学物質過敏症対策のさらなる推進を図るべきだと考えるが、指針策定に向けた本市の見解を問う。

答弁:産業観光部長

 農薬危害防止運動に対する取り組みについて、1点目の大津市農薬危害防止運動実施要領における関係部局とは、どこの部局を意味するのかについて。 
 公園や道路、学校等、現に農薬を使用する施設を所管している部局であるが、今後新たに農薬に関連することとなる部局についても連携を図っていくもので、柔軟に実施体制を再構築して効果的な運動に取り組んでいく。

 2点目の農薬危害防止運動実施要領に対して理解を深めるための庁内での取り組み内容について。農林水産課と大津市保健所保健総務課と連携を図り、レーク大津農業協同組合や大津市医師会などへの周知を行っている。しかし、庁内関係部局に対して、要領に記載された内容の周知を図るための具体的な取り組みは実施できていない状況である。

 3点目の広報等を活用した啓発活動に関連して、農薬の安全使用を啓発するための会議、研修会の開催実績、啓発内容、参加者実績について。水稲病害虫防除についての会議、説明会をレーク大津農業協同組合と共催して2回開催している。内容としては、散布日時の周辺住民への事前周知や適正使用ついて協議、説明を行ったものであり、参加者は農業組合長約35名のほか、県及び農業関係機関等の職員である。

 4点目の農薬の安全・適正使用による危被害防止対策に関連して、散布日時の事前周知や農薬の飛散を防止するための必要な措置を講じることを、だれを対象に、どのような体制で指導を実施したのかについて。水稲については、病害虫防除の会議、説明会を開催しているほか、防除に当たっても必要に応じて本市職員が現地立会を行っているが、公共施設については農薬散布に対する指導は実施できていない。

 5点目の今年度の反省を踏まえた今後の当運動への取り組み予定について。本年度内に農薬を使用している関係部局を対象にした安全使用についての研修会を開催することにより、公共施設内での農薬散布についての安全対策を図っていく。

 住宅地等における農薬使用の現状について、1点目の大津市はどのような方法、体制で病害虫やそれによる被害の早期発見に努めているのかについて。例年の病害虫発生時期を把握し、各所属職員が事前にパトロールを行うなど、対応している所属もあるが、対象となる公園や道路、学校等は数が多く、状況も様々であることから、所管する部局ごとに対応している状況である。

 2点目の公園等における病害虫駆除に当たっては、最小限の区域における農薬散布にとどめることが通知で求められているが、大津市はどういう方針でこれに取り組んでいるのかについて。都市公園や街路樹における病害虫の防除等に当たっては、財団法人大津市公園緑地協会に対し、関係法令を遵守するとともに、指定管理基準書や委託仕様書において病害虫の発生状況により、隣接地への影響等を考慮して剪定や薬剤による防除等を実施することとしている。特に薬剤防除については、農薬関連法令等を遵守し、人畜の安全及び対象の樹木への薬害に注意して実施することとしている。現在、同協会では、浄水場や保育園等が隣接する場合、薬剤を充填したカプセルを樹木に打ち込む等の方法で害虫の発生を予防するなど、農薬散布によるリスクの軽減に努めるとともに、薬剤を散布する際には近隣住民へチラシを配布するなどの周知を図っているところである。本市では、街路樹等については、農薬使用に当たっての留意点等を記載した街路樹等樹木マニュアルを作成し、病害虫対策を含めた維持管理を行っているが、現在、市有施設全体を想定した統一的な方針はない。

 4点目の農薬使用者には、農薬を使用した年月日等について記帳し、一定期間保管することが通知で求められているが、今後、通知に基づき、記帳された内容を土地、施設の管理者として正しく保管すべきと考え、本市の見解を問うについて。本市も土地、施設の管理者として、農薬使用者が記帳した内容の報告を受け、正しく保管すべきであり、特に住民等の利用が多い施設を管理していることもあり、こうした通知の内容を遵守すべく、今後、今年度実施予定の研修会や農薬危害防止運動などの機会を捉えて関係職員の農薬の適正使用についての意識を高めていく。

 病害虫駆除を実施する際の本市の今後の方針について。関係部局連絡会を開催し、農薬取締法や関連通知等を遵守すべく周知徹底を行うとともに、現状の把握を行った上で、公園・街路樹等病害虫・雑草管理マニュアルや他の先進地事例なども参考に、人の健康へのリスクと環境への負荷を最小限にとどめるため、総合防除を推進していく。さらには、こうした考え方を具体化するため、市有施設に係る基本方針の作成に向けた取り組みを進めていく。

答弁:教育長

 農薬の使用方法等の確認について。業者には散布の方法等について事前に指導をし、現地では教職員の立ち会いのもと散布をしているが、使用方法、注意事項等についてまでは確認ができていないのが現状であり、今後、現地で業者による説明を求め、立ち会い者が確認する等の方法をとっていきたいと考えている。

 周辺住民への周知について。年度初めの会議において、周辺住民への周知を行うように指導しており、各学校園で通知文を作成し、周辺住民に知らせている。現在の通知文においては、散布日時や注意事項等を記載しており、散布区域にはロープを張り、注意喚起の看板も設置するなどして実施している。しかし、使用農薬の種類等が記載されていない場合もあることから、今後、通知文の内容も統一し、周辺住民への周知を徹底していきたいと考えている。

 今後の防除のあり方について。数年前より樹木等の剪定や伐採、学校園の立地条件に応じ、樹幹注入も実施している。学校園においては、毛虫等が発生した場合には、捕殺や枝の剪定等を実施し、対処しているが、対処しきれない場合も多く、農薬を散布しているのが現状である。今後については、本市の方針を十分考慮し、関係課と協議をしながら慎重に対応していきたいと考えている。

答弁:健康保険部長

 これまでの化学物質過敏症対策に対する取り組みについて。昨年、庁内関係課で情報共有と意見交換を行う会議を開催したところであり、その上で本年3月、化学物質対策庁内連絡会議を設置し、室内環境における化学物質対策の推進に向け、まず一歩を踏み出した。今年度に入り、先進地である岐阜市への視察や他市への文書照会等により情報収集を行うとともに、本市ホームページを更新して保健総務課を相談窓口として明示するなど、化学物質過敏症について市民周知を図ってきたところである。また、去る11月には、庁内連絡会議の関係課をはじめ、市の公共施設管理者並びに保健師を対象として、建築物の室内空気中化学物質と健康をテーマとした研修会を開催し、約70人の参加のもと、室内環境における化学物質対策についての理解を深めてきたところである。私としても、これらを通じて化学物質過敏症の患者さんの症状の深刻さや対策に係る様々な課題について認識を新たにしたところである。

 指針策定に向けた本市の見解について。先日開催した庁内連絡会議において、まず市の管理する公共施設における化学物質使用のガイドラインの策定に向け、協議を行った。今後、先進地の取り組みを参考にし、関係部局との連携を図るとともに、病害虫の駆除に関する基本方針との整合も図りながら、市民の健康、さらには環境への影響を配慮したガイドラインの策定に向け、鋭意取り組んでいく考えである。

再 問

 農薬危害防止運動に関係して、大津市は、保健所を設置する市であるから、厚生労働省の医薬食品局長と農林水産省消費安全局長のほうから、「こういう運動を実施してください」ということで案内をもらい、自らが要領を定めて運動を実施した。しかし、残念なことであるが、庁内において十分な協力が図られずに、その取り組みは不十分なものであったという答弁もあった。市長から、「中核市に手を挙げなければよかった、メリットがなさ過ぎる。」というような発言もあったが、中核市として保健所を設置し、そのメリットというのは、市民にとってのメリットがなければならないと思う。きめ細やかな行政を推進し、それを実感できるように、市長のリーダーシップに期待するものであるが、所見を問う。

答弁:副市長

 質問については、農薬使用をする市役所の関係部局が大変多くあるのに、大変不十分で、これを大津市として、組織としてどういうふうに対応していくのかと、いう趣旨であろうと思っている。大津市の今日までの農薬使用に対する啓発も含めて、不十分であったということは強く認識したいと思っている。この農薬使用の適正化に向けた取り組みに当たっては、農林水産課が主体として取り組んでいる農薬危害防止運動に係る事務、さらには保健所が担当する毒物及び劇物取締法に係る事務を所管する部局もある。さらには、学校あるいは公園、そしてまた街路樹と、農薬を実際に使用する関係部局もある。いわゆる大きく三つの側面を持った関係部局が組織の中に実在する。それぞれが課題を持ち、あるいは対応、方策を持つということになるが、それがオール大津の1本の方策になっていない。こういうことは、やはり問題であろうと思っている。これは部局が大変多く関係するので、佐藤副市長と、我々2人の副市長が先頭に立ち、関係部局のほうに再度周知をして、課題あるいは対応策、方策、こういうことをそれぞれの部署で持ち寄りをしたい。そしてまた、その中で大津市の主要方策と、こういう方針というのを定めたいというように思っている。今年もこの運動が実施されたのが7月から9月で、いわゆる年間を通じて虫が発生するという期間は、ある特定の期間に集中するので、できればそれまでに対応できるような市の方策というのを、関係部局と知恵を絞って対応できれば大変ありがたいというように思っているので、この質問を契機にして、関係部局と意見を調整したいと思っている。

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