相次ぐ医師の退職が地方独立行政法人市立大津市民病院の運営に及ぼす影響について( R4. 3)
質問
「大津市民病院 外科・消化器外科・乳腺外科で治療中の患者様へ」との案内文書が配布されています。退職される医師の連名で発出されており、令和4年3月末から6月末にかけて、外科・消化器外科・乳腺外科の医師全員が市民病院を退職されることになったこと、また、後任の医師は現在のところは未定であり、いったん患者をご希望、ご病状に応じて、近隣の病院や開業医の先生方、あるいは市民病院内の診療科へ紹介をすることなどが記されています。この度、通院されている市民から当該紙面を直接受け取りましたが、手術後、長年に渡って検査を継続されてきたこともあり、他の病院での受診を余儀なくされることを嘆いておられました。患者の立場になってみれば、出身大学や医局に関係なく、どの医師も「市民病院に勤務される医師」であることに違いはなく、病院運営上の判断との案内文に釈然としない思いを抱いておられました。
令和4年2月22日、地方独立行政法人市立大津市民病院は、この度の事態を受けて、理事長と病院長との連名にて、患者の皆様、市民の皆様に対してのお詫びの文書を病院のホームページ上で公表されています。外科・消化器外科・乳腺外科の手術を前提とした患者の受け入れについては、現在見合わせているとのことであり、今後の診療体制につきましては、減員に伴う影響を最小限にとどめるよう対応中であることが記されています。患者への直接の案内についても、退職される医師の連名でなく、地方独立行政法人市立大津市民病院として行われるべきものであったと考えます。
令和4年2月3日、健康保険部長から大津市議会議員宛に「地方独立行政法人市立大津市民病院における外科等の動向について」と題した通知文が発出されています。以下、記載のあった文面を引用いたします。なお、当該文面の引用にあたり、あくまでも大津市として第一報を受けて、大津市として理解した内容であり、詳細については改めて市立大津市民病院に報告を求めており、このため、内容の一部に訂正等の可能性があるとの見解が示されていることを申し添えます。
『地方独立行政法人市立大津市民病院( 以下「法人」と言う。) の外科等の動向について、令和4年2月2日に法人から「当院の外科医が患者に対して真実でない情報が記載されたチラシを配布している」旨の報告がありました。法人に確認したところ、業務運営に関することなので、第一義的には法人内部で調査し、解決すべき組織内の問題です。しかし、今般の報告を受け、法人職員に不安や不利益を生じさせる恐れや市民に動揺が広がる恐れがあるなど、業務上支障を来たす状況にあると設立団体として判断したため、法人に対し地方独立行政法人法第121条の規定に基づく報告を求めています。なお、現時点で事実として把握している内容は別紙のとおりです。今後、法人からの報告で、事実関係の確認に努めてまいります。』
通知文からの引用は以上です。
また、本市の対応として、「法人内の業務運営に関することであり、本市として法的に直接関与することはできない。ただし、設立団体として、法の規定に基づき、法人の業務運営に支障がないか、不適切な点がないか調査の上、報告するよう求めている。なお、事実と異なる情報を市民に周知している場合は直ちに正すことや派遣元の大学に対し早急に事実確認をすることを助言している」との記載が通知文の別紙においてなされています。
大津市長は今期通常会議に提出をされている議案の説明に先立ち「今般、市民病院で外科等の複数の医師が退職の意向を示し、市民や患者の皆様にご心配をおかけしていることにつきまして、設置者として誠に遺憾であります。現在、地方独立行政法人法に基づき、病院の業務運営に関する報告を求めているところでありますが、こうした事態を招いた法人の責任は極めて重いものと認識しております。市としても、感染症対応や地域医療構想に連携して取り組んでいる滋賀県に対し協力を要請するなど、設置者として対応に努めてまいります」と発言されています。
大津市議会が令和2年11月通常会議で承認をした、地方独立行政法人市立大津市民病院第2期中期目標の前文には、「超少子高齢社会を迎えた現在、市民病院は、圏域内での救急患者の受入れや高齢者に多く見られる疾患の治療に努めている。今後、市民病院が、市民に寄り添った「治し支える医療」としての役割を主体的に担うためには、地域医療における市民病院の位置付けを近隣病院との協議などにより明確にした上で、中長期的な視点での経営の効率化や経営管理機能の充実、優れた人材の確保と意識変革が重要である。これらを実行することにより、地域医療構想の推進と持続可能な病院経営が担保される。取り巻く経営環境は常に変化し、かつ、厳しくなる中、市民病院はこれまでの業務の成果を生かしながら、患者や市民、地域の医療機関等から更に信頼され、地域医療を支え守り続けていくことが強く求められることから、第2期中期計画の策定に際しては、この第2期中期目標を確実に達成するための具体的な数値目標の設定を行い、進捗管理を行うことを求めるものである。」との記述がなされています。
大津市長はこの度の事態が地方独立行政法人市立大津市民病院第2期中期目標及び同中期計画、また、この度、議会に提出をされた令和4年度計画書に与える影響をどの様に評価されているのでしょうか。設立団体としての責任と権限を踏まえ、今後、必要と考えておられる対応とあわせて、答弁を求めます。
前述いたしましたとおり、大津市が地方独立行政法人市立大津市民病院に対して地方独立行政法人法第121条の規定に基づく報告を求めたのは令和4年2月3日のことですが、同法人からその原因となる情報が寄せられたのはその前日、2月2日であったと説明を受けています。大津市は同条の規定に基づく報告をどの様な意思決定過程を経て、地方独立行政法人市立大津市民病院に対して求めたのか答弁を求めます。
また、その後、今日に至るまで、大津市と地方独立行政法人市立大津市民病院との間でどの様なやり取りが行われたのでしょうか。設立団体としての責任と権限を踏まえて答弁を求めます。
答弁:健康保険部長
相次ぐ医師の退職が地方独立行政法人市立大津市民病院の運営に及ぼす影響についてのうち、1項目めの1点目、第2期中期目標及び同中期計画、令和4年度計画に与える影響をどのように評価しているかについてでありますが、本市は中期目標で「患者や市民、地域の医療機関等から更に信頼され、地域医療を支え守り続けていくこと」を公立病院として担うべき重要な役割として明示しています。市民病院は、これを受けて中期計画で各種の取組を掲げ、その達成に向けて年度計画を策定していることから、本市は当該計画の達成を求めてまいります。一方で、中期計画が中期目標に掲げる事項において、その実現に向けて適正かつ確実な実施ができない事態となったと認めるときは、法の規定に基づき適切に対処してまいります。
2点目の法第121条の規定に基づく報告をどの様な意思決定過程を経て市民病院に対して求めたのかについてでありますが、2月2日に法人理事長から市長へ「当院の外科医が患者に対して真実でない情報が記載されたチラシを配布している。」など、業務運営上の問題があるといった主旨の報告がありました。この口頭報告によると、患者や市民に動揺が広がる恐れがあるなど、業務上支障を来たす重大な事態が起こっていると推察され、法の規定に基づく改善命令を発出しなければならない状況も想定される中、不明な点も多くあったので、本市として口頭報告のあった直後に、市長以下、関係職員で協議し、市民病院に対して法の規定に基づく報告を求めることとしたものであります。
3点目の今日に至るまで、本市と市民病院との間でどの様なやり取りが行われたかについてでありますが、2月9日に市民病院に対し、法第121条第1項の規定に基づき、今般の外科等の動向の経過等や患者に関すること、リスクに関することなどについて報告を求めてまいりましたが、報告された内容は、「外科等の動向の経過」、「患者に対する問題点及び対応」、「病院業務運営へのリスク」、「今後発生する診療への影響」などで、全容が把握できるものではなかったため、再度追加で報告を求め、現在、追加で報告された内容を含めて確認しているところであります。
再質問
まず1点目、今後必要と考えておられる対応についてです。中期目標と中期計画の関係性についても改めて答弁いただけたと認識させていただきました。本来であるならば、中期目標を達成いただくというのは大前提であり、そのために、計画策定いただいて、年度ごとの計画も報告をいただいてるところであります。
しかしながら、その上で中期計画の実現が困難、確実な実施が見込まれない場合においては法の規定に基づいて、適切に対応するといった答弁を重ねてなされました。中期目標に及ぶ答弁だったと思うのですが、そのことについて、改めて詳細に答弁を求めたいと思います。
2点目、3点目に質問させていただいた、今日に至るまでのやりとりに関してです。できましたら、市長に答弁をいただきたいと思います。2月9日に文書で報告を求めていただいております。この間、全く報告がなかったということでもなく、ただ、現時点までに、大津市がえられている報告では全容が把握できない、その上で、改めて報告を追加で求められてるということでありました。
本議会、初問でも申し上げましたが、地方独立行政法人市立大津市民病院令和4年度計画、報告をいただいております。私は少なくとも今年度中に、市民病院から、先ほどおっしゃっていただいた全容を把握いただける情報しっかりと得ていただき、市民と、また、医療関係者の皆様、滋賀県はじめとする関係機関とも情報共有を図っていただくべきと考えますが、この点、市長いかがでしょうか。
答弁:健康保険部長
中期目標の関係でございます。適切に対応するということでございますが、中期目標の位置付け等について、改めてご説明させていただきたいと思います。
まず中期目標について、どういった場合に変更しなければならないのかと計量的な基準というものはございません。中期目標、或いは中期計画の変更が不可欠の場合というのが、独立行政法人法の解説の中で書かれておりまして、例えば法令改正等による制度の新設であるとか改廃、或いは新たな組織整備等に伴い当然に目標計画の変更が必要なときということでございます。
設立団体の長の権限として、中期計画の変更命令が法律に基づいてできるわけですが、これも法人の自主性自立性を尊重して、いたずらに変更命令をするものではないと。それと中期目標の範囲内での変更命令であるといったことが書かれています。あるいはまた、国の資料の中でも中期目標、中期計画の実現が困難なために、水準を単に引き下げるような変更といったような、内容をいたずらに抽象化したりといったような変更については認められないというような関係性になっております。こういったことについて、中期目標と中期計画に対する法の立て付けがございますので、しっかり踏まえる必要があると考えております。
今回の件につきましては、まずは、市民病院からの報告書を確認し、その内容を精査するとともに今後の影響予測等を評価していきたいと考えております。その上で、中期目標等を変更しなければならないような、中期的な影響が出ているのかといった観点で検討して参りたい。中期目標等変更すべきか、適切にその内容を見極めて検討して参りたいと考えております。
それと2点目の、改めて報告を求めているわけですけれども、2月9日に法律に基づく報告を求めました。その報告の内容については、全容を把握できるものではなかったので、再度、報告を求めておりまして、再度の報告が届いておりますが、その報告の内容について、現在、確認中でその内容も精査しているところであります。その内容について、影響のリスクであるとか、今後の見通しであるとか、しっかり市として評価して参りたいと。そのスケジュール的なことですけれども、当然、可能な限り早くやっていきたいと考えておりまして、年度変わりとか、そういったことも当然意識しております。
再々質問
1点目の再質問の答弁で、中期目標を見直す必要については、本来、地方独立行政法人としての自主性がおありの中で、もちろん軽々に見直していただくべきものもありませんし、またそうおっしゃられながらも、適切に見極めていくということでした。私、この間、何人もの市民の方から、「市民病院、今後、どうなっていくのか」とのお声をたくさんいただいています。本当に多くの皆さん方が不安を覚えておられます。目標で掲げていただいてる治し支える医療、大事なことだと思います。あらためて伺いますが、適切に見極めていくとのことです。まだ、最終的に報告、検証いただけてない中ではあるのですが、市長先頭にもちろん、検討いただけると思うのですが、今後どういった体制のもとで適切に見極めていただくことになるのでしょうか。その決意などとあわせて、お答えいただけるようであれば、よろしくお願いいたします。
答弁:市長
まず本市、地方独立行政法人市立大津市民病院の設置者として、現時点で、患者や市民、地域の医療機関からさらに信頼され、地域医療を支え、守り続けていくというこの中期目標を変更するという時点ではないと考えております。その上で、地域医療しっかりと維持していく観点から、設置者として全力を尽くして参る所存です。