災害対応拠点でありながら必要な耐震化が今もって図られていない本庁舎の整備に向けた取り組みについて( R1. 6)

質問

大津市役所本庁舎のうち、旧耐震基準で建築された本館棟及び別館棟については、大地震発生時において、庁舎としての機能を確保するための耐震強度を有していません。大津市は本館棟を免振工法にて改修し、別館は取り壊したうえ、取得した隣接旧国有地に中消防署とあわせて新棟を建てる方針でしたが、土砂災害警戒区域に指定されたこと受け、整備方針の抜本的な見直しが迫られ、現在に至っています。
 
大津市議会においては、平成29年10月に「必要な耐震化が図られていない庁舎の整備を実現するため、中消防署用地の早期選定を求める決議」を全議員賛成のもとで可決し、大津市長に対してさらなる取り組みを求めました。しかしながら、大津市長から示された中消防署の移転候補地はいずれも実現性に乏しいものであり、後に行われた消防局内における検討において、候補地に含まれていなかったびわこ競艇場駐車場の評価が最も高かったことについても、私が本会議で指摘をするまでの間、議会に報告すらなされませんでした。中消防署用地の選定が遅延することは、大規模災害発生時における対応力に多大な影響を及ぼすことはもとより、必要な耐震化が図られていない庁舎の整備は市民ならびに勤務される職員の生命に関わる最重課題であるとの認識のもと、以下、2点質問を行います。

 

1点目、中消防署用地の選定に向けた取り組みについて。平成29年12月、大津市は中消防署の更新整備に係る候補地として別所合同宿舎、皇子山総合運動公園国体記念広場及び同多目的広場、通称、4面グラウンド、大津市伝統芸能会館駐車場、大津市役所別館現地建替え、同業務用駐車場の4ヵ所6候補地を選定しました。平成30年2月通常会議において、それぞれの候補地の実現性について検証すべく、関係法令や防災上の観点を踏まえ大津市に見解を求めましたが、いずれの候補地も実現性に乏しいと評価せざるを得ない答弁内容でした。
 
また、平成30年9月通常会議においては、議会に対して候補地の選定に進展があったとの報告がないことを受け、大津びわこ競輪場跡地を中消防署用地に供する必要はないと判断され、契約を解除される考えがないのであれば、市民から負託を受けられた市長として、検討経過を説明いただくよう求めましたが、個別の候補地の評価には言及されませんでした。
平成30年11月通常会議においては、同年5月の時点において、皇子山中学校北側に位置するびわこ競艇場駐車場を大津市消防局は新候補地とされ、管轄のバランス、接道、法令、近隣関係、災害リスク、事業費等を踏まえて7候補地を評価されていた事実を明らかにしました。
それぞれの総合評価については、びわこ競艇場駐車場が最高点の10点、別所合同宿舎が3点と6点(なお、6点の評価については、隣接する皇子山運動公園の一部を活用し、同宿舎敷地の一部をもって公園の代替敷地とする案)、皇子山総合運動公園多目的広場は4点、皇子山総合運動公園国体記念広場は0点、大津市伝統芸能会館駐車場は5点、大津市役所別館建替えは8点、同業務用駐車場については、消防車両等の出動時に当該車両の入れかえが必要なため「評価外」、つまりも評価にも値しないとの結論を出されています。
 
大津市議会において、「必要な耐震化が図られていない庁舎の整備を実現するため、中消防署用地の早期選定を求める決議」が決議されてから2年近くが経過しようとしていますが、いまもって候補地の選定どころか、絞り込みすら行われていません。
大津市長はどういった方針のもとで、中消防署用地の早期選定を実現しようとしているのか。それぞれの候補地を対象に行われた検討の経過とあわせて見解を求めます。

 

2点目、本館棟を免震工法で整備するために必要となる取り組みについて。大津市は免震改修検討業務と劣化調査等業務を終えないと、同工法による基本計画に進めないとの方針を公共施設対策特別委員会初会合であらためて示しました。昨年度末に開催された総務常任委員会においては、今ある設計図書を基に不利な条件で検討を行い、免震に伴って必要となる耐震補強の内容についても概算と共に確認されたとのことでしたが、新年度予算案に当該業務に必要となる予算は措置されていません。
なお、本館棟の免震工法による整備については、一般社団法人日本建築学会近畿支部から戦後の歴史における歴史的建築として高い価値を持つことから、保存活用されるべきとの要望書が提出されたことを考慮されたものと認識をしていますが、解体する案があわせて示されるなど、大津市として何を優先して庁舎整備に取り組もうとしているのか、私には理解が出来ません。
 
大津市長は本議会において、庁舎整備については、住民投票に及ぶ可能性があるとの主旨で見解を示されましたが、災害対応拠点である庁舎の整備に向けた検討を加速させない理由にはならないと考えます。そもそも、平成16年度に耐震診断を行って以降、15年近くが経過しているにも関わらず、市長自らがこのような発言をされることに驚きを禁じえません。市民理解を深めながら、丁寧に検討を進めることは大切なことですが、整備に向けたスケジュールを何ら示されず、さらなる検討に必要となる予算も措置されないまま、時間だけが過ぎようとしていることに一層の危機感を抱くものです。
 
大津市はどういった前提が整えば、免震改修検討業務及び劣化度調査を実施し、同工法による基本計画に着手する方針なのか。これら調査を行わないまま、概算工事費の精度を高めることには限界があると考え、本市の見解を求めます。

また、免震工法による整備により、世代を超えて建築史学上の価値をより多くの市民に実感いただくことを優先するのであれば、狭あい化と老朽化が進み、隣接する駐車場もなく、バリアフリーも十分に図られていない、大津市立図書館本館の移転先として検討に含めることを提言するものです。同館跡地の活用を図ることで公共施設マネジメントの推進にもつながると考えますが、本市の見解を求めます。

 

3点目、庁舎本館棟・別館棟における耐震性能の不足が支所の防災機能に及ぼす影響について。平成31年2月、大津市は市民センター機能のあり方について、平成29年11月公表の素案を見直し、令和6年度までは業務時間や業務内容を見直したうえ、36カ所ある全ての支所を存続させる方針を示しました。当面の間、支所には市職員が配置されることになりますが、防災機能については令和2年度より本来業務を別に有する初動支所班員が中心となって担うことになり、地域の事情を把握する支所長・次長の役割は不明確なままとなっています。
 
初動支所班員と学区自主防災組織とが顔の見える関係づくりを進め、連携を強化することは重要と認識するものですが、大地震が発生した際、避難所の安全確認を行う避難所担当員については、小中学校の体育館にしか配置されていません。
建築の専門家でない同担当員で判断がつかなかった場合には、建築士会に所属する被災建築物応急危険度判定士に判断が委ねられることになりますが、その人員にも限りがあります。私自身も判定士としてその任にあたることになりますが、地区防災計画が想定する避難行動と災害対策本部による避難所開設に伴う意思決定にずれが生じた場合、当該学区においては相当な混乱が生じる恐れがあると危惧するものです。大津市業務継続計画や大津市災害時受援計画の実効性を高めるため、また、避難行動要支援者名簿の円滑な活用を図るためにも、支所職員は公助の一環として防災業務に従事いただくべきであり、学区消防団や自主防災組織等との連携をより強固なものとするためにも、支所=地域防災センターとしての位置付けをより明確なものにするべきと考えます。
 
大地震発生時において災害対応にあたられる初動支所班員の多くは今もって耐震性能が確保されていない、すなわち、機能空間が確保されていない本館棟・別館棟で勤務されています。市民に対して自助・共助による災害対応力の強化を啓発されるのであれば、庁舎の耐震性能確保という、必要最低限ともいうべき公助の役割を大津市はまずもって果たすべきです。
必要な耐震化が図られていない庁舎の整備を実現するためには必要な財源を効果的に確保していく観点からも、スケジュールを示して取り組むことが重要となりますが、今もって明らかにされていません。大津市長は庁舎本館棟・別館棟における耐震性能の不足が支所の防災機能に及ぼす影響をどのように認識しているのか。実施案において示された、地区防災計画・避難所運営マニュアルの実施、検証への支援ならびに新たな市民センター管理運営に合わせた防災機能の連携強化の実効性に対する評価とあわせて見解を求めます。

 

 

 

答弁:市長

本庁舎の整備に向けた取り組みについてのうち、3項目めの支所の防災機能に及ぼす影響についてですが、まず実施案に記載した地区防災計画、避難所運営マニュアルの実施、検証への支援については、平時における業務であることから影響はないものと考えております。 一方、実施案に記載した新たな市民センター管理運営にあわせた防災機能の連携強化については、風水害時や職員の勤務時間外において地震が発生した場合には、有効に機能するものと考えておりますが、職員の勤務時間中に大規模な地震が発生した場合には、まずは支所職員が対応するものと認識しております。

 

答弁:消防局長

2項目めの災害対応拠点でありながら必要な耐震化が今もって図られていない本庁舎の整備に向けた取り組みについてのうち、1点目の中消防署用地の選定に向けた取り組みについてでありますが、これまで中消防署の更新整備に係る候補地については、4カ所6候補地に絞り込み、災害リスクや消防署を設置する上での条件について、消防局において課題を抽出し、総合的に評価を加えた中で、関係部局と整理、精査を行い、まずは大津市役所業務用駐車場については大型車両が災害時において迅速に出動できる体制を確保できないため候補地から除外し、4カ所5候補地に絞り込みを行ってまいりました。
建設候補地のうち、皇子山総合運動公園多目的広場及び国体記念広場につきましては、主に都市公園法や建築基準法などの関係法令上の課題があり、また大津市伝統芸能会館駐車場については、大型消防車両等の出動経路が一方に限定されるなどの課題があることから候補地から除外し、別所合同宿舎及び大津市役所別館現地建て替えの2カ所2候補地に絞り込みを進めてまいります。
 
また、びわこ競艇場駐車場につきましては、消防署候補地として、消防局において管轄バランス、法令上の規制、近隣との関係や接道等に一定の評価をしておりますが、まずは当該敷地を所管されている滋賀県の意向等を十分に確認し、その内容を踏まえて庁内でしっかり協議や検討を加え、新たな候補地としてなり得るかを見極めてまいります。

 

答弁:総務部長

本館棟を免震工法で整備するために必要となる取り組みについてのうち、1点目のどういった前提が整えば免震改修検討業務及び劣化度調査を実施し、同工法による基本計画に着手する方針なのかについてでありますが、平成30年度に本館整備検討業務を行い、庁舎本館レトロフィット改修の実効性や具体的な改修に向けたより詳細な調査の必要性の有無、また他の手法、パターンによる比較などを行い、庁舎整備につきまして四つの整備パターンをお示しさせていただいたところであります。 その中で、本館棟を免震工法による改修を選択し、さらに費用算定の精度を高めるためには、議員お述べのように地盤調査や建物の劣化状況などの調査が必要となるものです。
しかしながら、まずは本館整備検討業務の結果を踏まえて、行政手続の簡素化やICTの進展による庁舎規模の検討、また公共施設マネジメントの観点等、あらゆる市有施設の活用の可能性を検討するなど、総合的な検討を行い、整備パターンや庁舎整備規模を決定する必要があると考えます。その結果、本館を免震工法で改修することとなれば、免震改修検討業務及び劣化度調査に進めてまいりたいと考えております。
 
2点目の本館棟を免震工法による整備により大津市立図書館本館の移転先として検討に含めることについてでありますが、庁舎整備の推進に当たり、新棟規模の算定において規模が大きくなることが想定されることから、慎重に判断する必要があると考えます。

 

再質問

まず、市長にお伺いします。学区避難所運営マニュアルや地区防災計画策定の手引を改めて確認をさせていただきました。その上で、機能空間が確保されていない庁舎に勤務されている職員の皆さん方が駆けつけて来て頂けるという前提を市民に示されていること自体、私は矛盾していると考えます。しかも、市民センターのあり方についてはしっかりとスケジュールを示しながら、庁舎の問題については全くスケジュールを示されようとされない。今、総務部長からこれまでの答弁を踏まえた内容でお答えいただきましたけれども、今年度は具体的に何をされるのでしょうか。免震するかどうかの判断とおっしゃられましたけれども、具体的に予算措置をされていなければ内部の検討でも限界があると思います。改めて市長に見解を求めます。

 

次に消防局長にお伺いいたします。もっと具体的に絞り込めるはずだと思います。平成30年5月の段階で相当検討いただいています。今の答弁を伺っておりましたら、その時点からどういう検討が進んだのかが全く理解ができませんでした。以前にも申し上げましたが、1年近くかけられて、今のような答弁であれば、庁内の連携が十分に図られていないのではないでしょうか。以前、私が調査整備準備室を設けられませんかと申し上げたところ、市長は連携できているから大丈夫とおっしゃられましたが、今の答弁であれば、連携なんてできていないと思います。市民の生命が、職員の生命がかかった話なのですよ。災害対応拠点なのです。復旧や復興に影響する事なのですよ。改めて見解を求めます。

 

 

答弁:市長 

1点目の今年度庁舎について何をするかということであります。先ほど総務部長がお答えしましたとおり、今年度については本館整備検討業務の結果を踏まえて行政手続の簡素化やICTの進展による調査規模の検討、また公共施設マネジメントの観点等、あらゆる市有施設の活用の可能性を検討するなど総合的な検討を行い、整備パターンや庁舎整備規模を決定する必要があるということで、このような検討を行っていきたいというふうに考えております。
 
また、今年度予算がないので、内部的な検討にとどまるのではないかという御指摘もありましたけれども、先ほど総務部長がお答えいたしましたとおり、本館を免震工法で改修することになれば、免震の改修検討業務や劣化度調査を進めるということになります。当然、これらは内部でできないものですし、費用としても見積もっている限りでも1億円弱の非常に大きな費用がかかるということになりますので、このような1億円弱の調査をやるということは、概ねその方向で進めるという方針を出してからでなければできないというふうに考えていますので、今年度はその前段階の調査をしっかり行いたいと思っております。

 

答弁:消防局長

これまでの課題等の検討の経過が進んでいないということでありますが、まず、災害対応のための中心的な役割を担う施設であるということでございますので、候補地の持つ特性、例えば法的な課題とか管轄バランス、また災害のリスク、その他そのときの消防車両の避難等も踏まえたそういったような内容を庁内で十分整理し検討を加えてきたものでございます。皇子山総合運動公園多目的広場につきましては、まず不形成な敷地となるということで、4面を有するグラウンドとしての機能が大きく失われてしまうということになると。また、国体記念広場につきましては、建物を建てる際の建築基準法を今現在満たしていないと、接道していないということなどが上げられ、どちらも都市公園法、また都市計画法など乗り越えがたい課題があって、最終的にこういったような判断をさせていただいたということでございます。
 
次に、伝統芸能会館の駐車場につきましては、今現在、大型車両が1方向のみの出動経路しか確保できないということから、消防活動上、ここは非常に初動対応に支障を来すという判断を最終的にさせていただいたということでございます。
なお、これまでの検討の経過でございますけれども、平成30年度以降、庁内において数十回にわたりまして調整なり協議、また関係課と情報共有を図らせていただきまして、もう一つは庁舎の整備、基本計画との整合性も踏まえた中で、こういったような結論になったということでございます。

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