競輪事業の展望について( H21. 11)

質 問

 市財政の窮状を救おうと、市議会が中心となって誘致しようとしていたのは、当初、競輪ではなく競馬であった。現在の栗東市治田にあった草津競馬場を大津に移転しようとするもので、昭和22年12月16日には、大津市競馬場設置に関する決議が3人の議員から市議会に提出され、全員一致で可決されている。その後、競馬場誘致促進実行委員会が設置されたが、当時の森田市長は、「賭博行為で財政を賄うぐらいだったら赤字のほうがましだ」という考え方であり、この話はいつの間にか立ち消えとなった。その後、昭和23年8月に自転車競技法が公布施行され、大津市は調査研究に乗り出したが、市長は競輪の開催にも反対の立場であり、当初は目立った進展もなかった。しかしながら、競輪を最初に実施した小倉、続く住之江、大宮が驚異的な好成績をおさめると、その動きは徐々に積極的なものとなり、昭和24年2月には、資金集めを目的とした民間人による滋賀県自転車振興会が設立され、7月に森田市長が辞職し、かわって積極派の佐治助役が市長に当選したことで、競輪誘致に向けた気運は一気に高まりを見せる。連合国軍総司令部が持っていた競輪場建設に関する許認可権が大幅に日本政府に移譲されると、大津市は通産省に対して、観光施設整備に必要な財源を確保するために競輪場が必要であると強く訴え、滋賀県に対しては、競輪場新設の認可を申請するよう求めた。当初、非戦災都市への認可は難しいと考えられていたが、昭和24年12月16日、滋賀県大津市に競輪場を設置することが認められ、続く25年1月21日には、時の内閣総理大臣吉田茂から競輪指定都市の認可を受けている。大津市議会には同年2月14日に報告があり、この議会で大津市営自転車競技条例が上程、可決され、設置されていた各種競技場誘致委員会もその任務を終えて解散となった。その後、滋賀県自転車振興会を主体とした琵琶湖観光施設株式会社と競輪場の建設や運営方法をめぐる波乱があったが、同年4月20日に県営レースから施行が開始されることになった。昭和15年造営の近江神宮の祭主となられて以来、滋賀県と関係の深かった高松宮宣仁親王殿下から優勝杯が下賜されたのは、この開設レースであり、後に初代ミスター競輪と呼ばれるようになった山本清治選手が初代受賞者となっている。

 現在、特別競輪は、開催を希望する施行者の中から決定されるが、高松宮記念杯競輪については、これまでの経緯等にも一定配慮を行うと運営要綱に記されており、これまで大津びわこ競輪で開催されてきた。ちなみに、現在取り組みが進められている収支改善計画が策定されたのは、特別競輪等運営委員会からその提出を求められたからであり、それが第60回開催に当たっての附帯条件であったからである。

 今年も特別競輪等運営委員会委員長に対して特別競輪等開催申請書を提出する時期となった。ちなみに、平成22年度の開催については平成20年12月24日に申請がなされ、平成21年3月13日には大津びわこ競輪で第61回の高松宮記念杯競輪が開催されることが、他の特別競輪等の開催場とあわせて決定しており、申請には過去の実績に加え、開催計画が必要となる。

 次年度の結果もわからない状態の中で次々年度の売上目標を立てるわけであり、数値の設定そのものに信頼性を持たせるのは極めて困難である。本年度に開催された第60回の場合、申請時の売上目標額は155億円であり、開催委員会で145億円まで下げられたのにも関わらず、車券売上実績は約123億円であった。ちなみに、平成22年6月3日から6日にかけて開催される第61回の申請時における売上目標は145億4,000万円となっている。

 重ねて申し上げるが、この金額は第60回の車券売上実績がわかるまでに設定されたものであり、好条件の開催と言われた本年度の実績が前年度と比較して大幅に減少していることを踏まえると、実現は限りなく不可能に近い。大津市は平成23年度特別競輪等開催申請に当たり、損益分岐点を幾らとし、売上目標を設定されようとしているのか。先月、小倉競輪で4日間の日程で開催された朝日新聞社杯競輪祭の結果も相当厳しいもので、開催委員会の目標は140億円に設定されていたようですが、車券売上実績は約112億7,400万円であった。景気の動向を踏まえると、売り上げが劇的に回復するとも考えられず、目標と実績が余りに乖離するようであれば、累積する繰上げ充用額が一気に増大する可能性があることから、見解を問う。

 そもそも予算審議前に高松宮記念杯競輪の開催は既に決定をしており、もし仮に予算が否決された場合にどのような事態が生じるのか、想定すらされていない。特別競輪等運営委員会で決定された内容は、社団法人全国競輪施行者協議会から各施行者に対し通知されるが、各地で開催される特別競輪等を包括するものとなっており、予算の否決は大津びわこ競輪だけの影響にとどまらず、競輪業界全体に影響を及ぼすことになる。だからこそ、特別競輪等運営要綱における不適格要件の中に、「経営が不安定であること」に加え、「継続的に競輪事業に取り組むという意思が明確でないこと」という文言が含まれているのだと理解をしている。現在、競輪事業調査特別委員会においてさまざまな議論がなされているが、2月定例会における中間報告は、「今後も委員会活動を通じて競輪事業を取り巻く情勢を把握するとともに、収支改善計画の取り組み状況を注視しながら、経営手法の見直しや廃止に向けた検討も選択肢に入れ、本市の競輪事業の今後のあり方について引き続き調査研究を行ってまいりたい」という言葉で締めくくられ、また平成20年度競輪事業特別会計における監査委員の意見は、「収支改善計画に定められた各事項等を柔軟かつ大胆に実行した上で、改めてあるべき事業経営の展望を見極める中で、事業のあり方についても検討する必要があると考えるところである」との言葉で締めくくられている。

 現在、平成23年度までに目標とする誘客対策、業務見直しを完了させ、経営を黒字体質に転換し、平成24年度以降の経営安定化を図る努力がなされているが、施行の前々年度に特別競輪の開催認可を受け、前年度に普通競輪を含めた事業計画を経済産業省に提出しなければならない現在の制度において、継続的に競輪事業に取り組むという意思が明確でないことを大津びわこ競輪が示すとするならば、どのタイミングでの判断が望ましいのか。時期等について検討していく必要があると考え、見解を問う。

 大津市は、自転車競技法第1条第1項の規定により、自転車競走を行うことができ、言いかえれば、地方財政の健全化を図ることを前提として指定を受けている。また、事務事業評価シートにあるように、収益金を確保し大津市一般会計への繰り出しを行うことがその成果であり、会計年度独立の原則の例外をなす繰上げ充用が恒常化している現状に直ちに終止符を打つ必要がある。今月1日、神奈川県競輪組合は、花月園競輪場での競輪開催を2010年3月で廃止することを決定された。開催を続けても、平成21年度末で総額約66億円に上る見通しの累積赤字と債務の拡大は避けられないものとし、60年の歴史に幕をおろす決断をされた。大津市は今後どういった展望を持って競輪事業に取り組んでいかれるのか、見解を問う。

答弁:産業観光部長

 1点目、平成23年度特別競輪等開催申請に当たり、損益分岐点を幾らとし、売上目標を設定するのかについて。現在、平成23年度の高松宮記念杯競輪の開催に向けて、特別競輪等運営要綱に基づき、開催申請書の提出準備を進めている。売上目標については、大津市収支改善計画に基づく売上目標は145億4,000万円となっているが、本年の特別競輪の厳しい売上状況から、133億円に設定したいと考えている。また、損益分岐点については、本年度の実績から、100億円程度になるものと考えている。

 2点目、特別競輪等運営要綱における不適格要件の中に、「継続的に競輪事業に取り組むという意思が明確でないこと」という文言があるが、もしこれを示すとするならどのタイミングが望ましいのかについて。 特別競輪を毎年開催している本市においては、関係他方面への影響等も非常に大きいものがあるため、慎重に検討する必要があると考えている。

 3点目、今後どういった展望を持って競輪事業に取り組んでいくのかについて。昨年度に策定した収支改善計画に基づいた取り組みを平成21年度から本格的に進めており、特に開催経費の削減策は、ほぼ計画に沿った削減が進んでいる。売り上げの振興についても、重勝式勝者投票の実施をはじめとして、大型商業施設でのPRイベント、場内開放イベント等の売上振興策にも努めており、今後その効果が出てくるものと期待している。いずれにしても、競輪事業を取り巻く環境は引き続き厳しい状況にあるが、関係団体の協力を得ながら、事業の健全経営に向けて努力していく所存である。

再問

 競輪事業の展望について再問。先ほど小倉を紹介したが、全日本選抜も非常に厳しい結果で、答弁にあった133億円というのは相当厳しいと思う。開催する意思が明確でないということは、他に与える影響もあるので慎重に検討しなければならないと答弁されたが、質問の中でも申し上げたが、繰上げ充用額がどんどん増えおり、会計独立の原則も何もない。売り上げの向上にいろいろ尽力されているのは委員会等を通じて認識しており、今も答弁にあったが、商業施設におけるイベント、重勝式のPRなど取り組んでおられることは理解しているが、今のこの時期ですので、踏み込んだ答弁をいただきたい。

答弁:産業観光部長

 競輪事業については、非常に厳しい状況にある。そして、133億円というのは見込みが高いのではないかという指摘でしたが、本年は123億円の売り上げがあった。特別競輪を毎年開催している本市にとっては、影響が非常に大きく、競輪界に及ぼす影響を考えると、引き続いての開催が必要であろうと考えている。

 しかしながら、先ほども述べたように、非常に厳しい状況にあることは、これはもう間違いない。そういう中にありまして、今後も頑張ってまいりたいと考えている。

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